しゃくし定規な判断が
事態を深刻化
融雪器は大きく分けて電気式と燃焼式があり、電気式は事務室から一括で操作が可能だが、燃焼式は係員が現地に赴き点火しなければならない。
また燃焼式には6時間程度稼働する「底面式融雪器」と、24時間程度稼働する「側面式融雪器」がある。
前者は列車運行時間帯に線路に立ち入って給油しなければならず、運行への影響のみならず、人員確保や安全上の問題があるが、融雪機を稼働する機会が少ない都市部では底面式が多く残っているのが実情だ。実際、過去5年で京都駅の融雪器を稼働したのは1度だけで、ポイントが凍結した前例がなかったというが、これが慢心を招いた。
JR西日本は降雪について、民間気象会社が提供する気象予測データから判断している。気象庁の予測を軽視したのではと思うかもしれないが、民間気象会社も気象庁の観測データをもとに、より細かいエリアで予測しており、細かい区間ごとに運転規制を行うにはこちらのほうが好都合だからだ。そして今回、民間気象会社の示した予報は8センチの積雪だった。
だがこれは8センチか10センチかという、基準の話ではない。JR西日本自身が認めるように、「10センチ」とは目安であり、10センチに達しない場合は融雪器を稼働してはいけないという決まりはない。
しかし、近畿統括本部はしゃくし定規に判断し、京都駅を含む各駅に対して「融雪器の稼働は不要」との連絡をしてしまった。そのため点灯が容易な電気式を除いて、融雪器を稼働させなかった。「10年に1度」と言われる中で、あまりにも感度が低かったと言わざるを得ない。