もっと女性に喜ばれるメニューづくりをするべきだと思っていました。男性社員がガッツリとした弁当を食べているのを見ても、同じ職場で働いている女性社員が「私も食べたい」とはなかなか思わないでしょう。でも女性社員が美味しそうに弁当を食べているのを見れば、男性社員だって食べたくなるに違いない。

 玉子屋の弁当はブルーカラーだけではなく、オフィスで働くホワイトカラーにも好評をいただいて大きく食数を伸ばしてきました。今後もホワイトカラーの食数を伸ばしていくのであれば、もっと女性に訴求するようなメニューにブラッシュアップしなければならないと感じていました。

食品偽装のグレーゾーンを
初めてなくした弁当屋

 ハンバーグのソースやスパゲティのバリエーションを増やす。もっと野菜を使ったメニューを増やしたり、フライや天ぷらの衣を薄くしてヘルシー志向に寄せていく。盛り付けや食材のバランス、色合いなどにもっと気を使って、見た目の美味しさも強調する。

 魚の切り身の大きさにばらつきがあるのも気になっていました。胴体の中心部と尻尾に近い部分では同じ大きさだとしても厚みが違います。尻尾に近い部分が当たって気を悪くするお客様だっているかもしれない。切り身が均等になるようにカットも工夫しました。

 また2000年代に入って、輸入牛肉を国産牛肉と偽る牛肉偽装事件が大きな社会問題になり、その後も原材料の偽装、産地の偽装、消費期限や賞味期限の偽装など、各種の食品偽装事件が頻発して、食の安全に対する関心が高まりました。

 食品偽装自体は以前からあったわけで、当時の食品業界はまだ野放しに近い状態でした。

 たとえば東北では「モウカ」と呼ばれるサメ(ネズミザミ)は、焼き方次第でマグロの照り焼きのような味になります。深海魚を銀ダラと謳って売っている店も多かった。鮭弁に鮭(サーモン)の代わりに安価なマス(サーモントラウト)を使うのは偽装にも数えない世界だったのです。

 弁当業界でも偽装は横行していた。玉子屋でもかつては一部グレーな食材が使われたことがありました。私は玉子屋に入ってから業界の実態を知って、これを正さなければいずれ大きな問題になると思っていました。お客様に安心していただけるいい食材を徹底的に使って、それをきちんとお伝えする体制を率先してつくり上げる。それもメニュー改革の一環に位置づけました。原産地など食材の表示を一つひとつクリーンにしていった弁当屋は、恐らく玉子屋が最初だと思います。