配達は注文数が確定する前に
「見込み」で出発する
配送システムの効率化も改革のポイントでした。
玉子屋について多くの人から驚かれるのは、1日最大7万食という数の弁当を毎朝9時から受け付けて、昼の12時までに各オフィスに届けていることです。それだけ大量の弁当をどうやって都内各地のオフィスに時間内に届けるのか。
要は遠距離、中距離、近距離と配達エリアを分けて、配達車同士が連携することで配送効率を高めています。
まずは遠距離エリアの配達車は受注を待たずに、朝8時の段階で「見込み数」の弁当を積み込んで出発。中距離エリアの配達車はそれより遅れて出発します。遠距離部隊の弁当が余ったり、不足する見込みとなった場合は、遠距離エリアの配達車と中距離エリアの配達車が連絡を取り合って、弁当を補給したり、逆に余った弁当を積み替えます。同じように中距離エリアの不足分や余剰分は、大田区周辺の近距離エリアの配達車に積み替えて調整していく。
こうした配送システムは私が入社する前から確立していて、入社前、何度か配達車に同乗して配達の様子を見せてもらいました。本当によくできたシステムだと感心したのですが、そのときに「リバ調」と書かれた配達車が1台あることに気づきました。
聞けば、配達ポイントに「リバーサイド」というビルがあって、「リバーサイド用の調整車」だから「リバ調」とのこと。
「ここのお客様は数が確定していないまま注文が入ってきてしまうので、1台だけ余分に弁当を積んでおいて、それで調整して最終的な数を確定させるんです」と配達スタッフが教えてくれました。
弁当が余った場合には、当時、近辺に自動車教習所があって、そこの売店で販売できる取り決めになっているとか。無駄が出ない工夫が凝らされていることに感心しきりでした。
同時に配達現場を見ていて思いついたのは、「リバ調」のように自由に動ける調整車両をもっと増やせばいいのではないかということです。
遠距離エリア、中距離エリア向けにも調整車を複数台用意して、弁当の不足分を補ったり、余剰分を引き取ってほかのエリアに臨機応変に回していく。配達車同士の連携に加えて、複数の調整車を投入すれば、配送効率も配達の精度ももっと上がると思いました。
実際、調整車の追加導入で配送能力は向上しました。私が入社した当時、配送ルートは40ほど。社長になった頃には100ルートまで増えましたが、配送システムに破綻はきたしませんでした。調整車がカバーする部分が大きかったと思います。