私のマネジャー人生を変えた「カミングアウト」
ある仕事で「答えが見つからない」という重大な事態(修羅場)に直面した時、私は、プライドに固執するのをやめてしまいました。
以前は、こうした事態に直面した際、なんとか理屈をこねくり回して、自分でもまったく自信がないにもかかわらず、「これが答えだ」と言い張っていました。
それを「この仕事の答えは、俺にもわからない」とハッキリ言ってしまったのです。いわば、カミングアウト。わからないことをわからないと、素直に認めてしまったのです。
続いて、「この難しい課題に立ち向かうには、私一人の力では限界がある。私は最高品質の成果物、実績を作り上げたい。ぜひ、チームの皆に協力してほしい」とメンバーに協力を懇願しました。
その時の彼らのポカンとした顔を、いまでも覚えています。
ほんの少しではありましたが、明確に、空気が変わった気がしました。メンバーも「この人はプライドを捨てて、自分たちと本音で仕事をしたいのかも知れない」と感じてくれたのだと思います。
もちろん、カミングアウトだけで、すべてがうまくいくようになったわけではありません。しかし、このひと言は、確実に私のマネジャー人生を変えました。プライドを放棄したことで、本音でものが言い合えるようになったのです。
そして、フラットな組織を求めるY世代、Z世代にとっては、そんなマネジャーのほうが「ついて行きたい」と思ってもらえるのもまた、事実なのです。
本音をカミングアウトすると、メンバーも対等に接してきます。そんな中で、カチンと来るひと言にプライドが傷つくこともあります。しかし、それによって自分が楽になり、成果も出るならいいではないかと割り切れば良いと思います。
おそらく、多くのマネジャーが自分のプライドに邪魔をされていると思います。そんなものは捨て去ってしまいましょう。
これが「メンバーが自発的に動いてくれる」仕組みのいわば「一の矢」です。プライドを捨て去って、常に本気で語りかけましょう。
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山本真司 著