さらなる成長のため
グローバルな展開を促進する

井上 日立の変革は、いまも継続しているのでしょうか。

森田 変革はこれからもずっと続いていきます。目標に対してどこまでできたかというよりも、「次は何」という感覚を常に持っています。社会のニーズは変化しますし、テクノロジーもどんどん進化しています。デジタル技術で言えば、6G通信はまだ議論の段階ですが、通信速度は100倍になりますからね。そうなったらいまのITシステムはすべて作り直しです。また、Web3もありますし、メタバースもあります。そうした社会の変化やテクノロジーの進化に合わせて、我々の社会イノベーション事業の中身も提供の方法も変えていかなければなりません。

 一方で、会社の仕組みについては、毎年のように変えてしまったら現場が混乱してしまいます。ですので、一度変えたら、ある程度は継続性をもってやっていくことになります。

井上 これからも変革は続いていくかと思いますが、日立の未来として、どのような展望を持たれていますか。

森田 これまで社会イノベーション事業を進めてきて、手応えをつかむことができています。次のステップとしては、さらなる成長を目指して、提供する範囲をグローバルに広げていくことでしょうか。我々としてもよいものを生み出せたという自負があるので、もっと多くの人に使ってほしい、ということです。

 ただ、注意しなければいけないのは、こちらがよいと思っているだけだと、失敗するケースが多々あることです。それはテクノロジー指向の会社にありがちなことで、こちらは「優れている」と考えているものの、顧客は「興味がない」というパターンです。自分たちがよいと思うだけではなく、相手にもよいと思ってもらえるように、デジタルテクノロジーに注力しながらも、カスタマーセントリック、つまり顧客や、ひいては社会が何を求めているかについて理解を深めていくことも必要だと考えています。