第5世代通信システム「5G」の普及と円安進行により、通信会社は意外な苦境を強いられている。輸入するiPhoneの価格高騰にとどまらず、海外メーカーの通信設備の費用負担が膨らむ一方なのだ。KDDIの高橋誠社長はその解決策に一家言を持つ。果たして、巨額の設備投資にまい進する楽天グループの救いに繋がるのだろうか。特集『総予測2023』の本稿では、その大胆なアイデアを余すことなく披露してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
円安と燃料高騰が経営直撃
価格転嫁で“値上げ”は避けられず?
――2021年の官製値下げを経て、22年は図らずもKDDIの通信障害で、通信の信頼性が問われた年となりました。
政府の要請もあり通信各社が値下げした21年を受け、22年は通信を基盤にしながら(非通信といった)他の事業を成長させていくことが課題になりましたが、その真ん中の通信で障害を起こしてしまいました。
10年前なら障害でスマートフォンが使えなくなっても公衆電話や固定電話がたくさんありましたが、今やスマホが使えなくなったら実際に生活が立ちゆかなくなり、通信のデータが止まれば社会活動がストップします。まさにそれが現実に起こってしまい、通信が、いかに代替性がなく、あらゆる産業に染みわたるサービスなのかということを改めて感じさせられました。
この経験から、シングルネットワークでは事業継続計画(BCP)の観点から課題があったことがよく分かりました。すでに政府で「緊急時ローミング」の議論が始まっていますが時間がかかります。そこで、われわれ自身が先行して、サービスとして緊急時に他社の通信に代替する仕組みを提供することにしました。
設備の故障は、一定程度は起こり得るのでゼロにするのは不可能ですが、障害が起こったときにいかにレジリエントに元に戻すかという準備が大事です。これは以前から意識はしていましたが、本当にわかっていたのかということを問い直しています。
――円安と燃料高が産業界を襲っていますが、通信業界にはどんな影響があるでしょうか。
通信は内需産業ですが、(iPhoneなど)スマホを海外から輸入していて、通信設備はスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキア、韓国サムスン電子の製品を使っているので、為替の影響は当然あります。もともと5G(第5世代通信)の設備は高いのですが、円安で設備投資の費用がどんどん上がっています。
さらに燃料高騰で電気代が上がっているのは深刻です。5Gが浸透して、次の「ビヨンド5G」の時代になれば、使用電力量はますます増えていく。NTTは光電融合技術を推進して技術の力で電力量を下げる挑戦(IOWN構想)をしていますが、われわれもそうした分野に取り組みたい。
――他の業界では、価格転嫁で値上げを進める動きが出ています。通信業界はどうでしょうか。
大規模通信障害を経て「もはや通信は代替性のないサービスになった」ことを痛感したという高橋社長。23年の通信業界は、5G普及が一段と重要な課題となるが、iPhoneなど海外端末の価格高騰でユーザーの動きは鈍い。海外から輸入する5G設備の負担も増大する中で、それを解決する独自のアイデアとは何なのか。次ページでは、その大胆な構想について明かしてもらった。