ちなみに、イカやタコ、サラミ、ビーフステーキ、フランスパンなど、力を入れてかむ食材を避けるようになっている場合は、かむ力に問題がある可能性大です。読者の皆さんはいかがでしょうか?
歯が1本だめになると私たちはそこを避けて、別の歯でかむようになります。すると今度はその新たな歯に負担がかかり、そこがまた、弱くなっていきます。中でも歯槽骨(しそうこつ、歯を支えるあごの骨)が破壊される病気である歯周病があると、このようなことになりやすく、無理をしてかんでいると、たくさんの歯がかめない歯になってしまいます。そのようなことにならないためにも、思い当たる人は、早めに歯科で適切な治療を受けてください。
グラグラしている歯を治す方法はいろいろあります。歯の固定、歯周病の治療、抜けている部分に対する入れ歯やインプラントを入れる治療などです。治療が終わってしっかりかめるようになると、患者さんの外見も変わって来ることが多いのです。
例えば、40代の会社員男性は初診時、100キログラム近くはありそうなメタボ体形をしていました。すでに歯周病で抜けてしまった歯が何本かあり、これを部分入れ歯で補うことになりました。
できあがった入れ歯を装着した男性は、「よくかめるようになりました。食事もおいしくて。でも前のようにたくさんは食べられなくなりました」と話します。
その後、定期的に受診に来るたびに、顔もからだもスリムにいい感じになってきたのです。話を聞くと、さぼりがちだったトレーニングジムを再開したとのこと。
「歯をくいしばれるようになったので、バーベルも持ち上げやすくなりました」
とうれしそうに話してくれました。
しっかりかめるようになってから、血圧や血糖値が下がったという患者さんも複数います。ダイエットがなかなかうまくいかない人は、一度、歯の問題について見直してみることも、いいのではないでしょうか。
歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。
※AERA dot.より転載