空き家問題などを助長する
「迷惑施設」にも

 2018年頃から広まった新語に「パワーカップル」というのがある。夫婦合わせての世帯収入が1400万円以上、というのが一つの定義らしい。

 そのパワーカップルが都心や湾岸のタワーマンションを購入している、とマンション業界の一部でささやかれている。真偽を確かめる方法はないが、ある程度は納得できる仮説である。タワーマンションは、そんな彼らの需要に応えている住形態なのだ。

 タワーマンションを開発する最大のメリットは、限られた敷地により多くの住戸を作ることができる、というところにある。それまで15階程度の建物しか建てられなかった場所で、容積緩和によって30階や40階、場合によっては60階を可能にしたのがタワーマンションという住形態なのだ。

 そしてタワーマンションという住形態は、郊外や地方出身者の都心居住を強力に後押ししているともいえる。ただし、現状のマンション市場を眺めると、タワマンは彼らに対してリーズナブルな価格で住宅を提供しているとは思えない。むしろその逆である。

 タワーマンションを建設しているデベロッパーは、郊外や地方からの人口流入を促すためにそれを供給しているわけではない。彼らは単純に「儲かるから」という経済原理に基づいてタワーマンションを作って売っているのだ。

 しかしその結果、郊外では空き家が増えている。

 そういった現象の一つとして、多摩ニュータウンでは居住人口が増えなくなった。今後は減少に転じるものと思われる。

 さらに深刻なのは高齢化である。分譲時期が古い多摩市では、すでにニュータウンエリアの高齢化率が市全域より上回っている。ニュータウンエリアでは若年層の新たな流入が期待できないので、今後は急速に高齢化が進むと予測できる。

 現状、多摩ニュータウンなどで空き家になっている住宅は、人が住めないほど老朽化しているわけではない。現に、今も多くの人がそこに住んでいる。

 しかし、デベロッパーは「儲かるから」タワーマンションを作り続けている。都心部だけでなく、郊外にもタワマン建設は進んでいる。その結果、どんどんと空き家は増え、ニュータウンでの高齢化が進む。