返礼品ランキングで上位に食い込むための
地道なデータ戦略

 ふるさと納税のプラットフォームといえば、ふるなび、さとふるなどが有名だが、なかでも一番の老舗が2012年にオープンしたふるさとチョイスだ。須崎市が本格的に力を入れ始めた2014年頃は、いかにふるさとチョイスで返礼品ランキング上位にランクインし、多くの人の目に留まるかが寄付額を大きく左右していたという。

「どういうアルゴリズムでランキングが変動するかを、ひたすら目視で研究していました。寝る間も惜しんで、時間があればひたすらサイトに張り付いてましたね」

 SEO対策などの専門知識を持っていたわけではないが、大学で推測統計学を専攻していたこともあり、データ分析は苦手ではなかった。業務の傍ら自主研究に没頭した結果、ランキングが変動する一定のパターンがあること、掲載する時期によっても傾向が異なることなど、いくつかの法則をつかんだ。

 こうした法則を突き、ランキング上位に入ったことで次第に寄付が入り始める。すると市民から向けられる守時氏への視線も、「土佐弁を話せない怪しげな兄ちゃん」から次第に変わっていった。

「あれも出したい、これも出したいと、前向きな反応が明らかに多くなっていきました」

 しかし、出品依頼が増えたことで思わぬデメリットもあった。同じカテゴリーの返礼品を一度に増やしすぎたことでPVが分散してしまったのだ。そうなるとランキングは上がりにくいうえ、須崎市内の事業者間での寄付の取り合いを招きかねない。それ以降は「須崎のかんきつ」や「須崎のカツオ」が過剰にならないように、時には事業者を説得しながら掲載のバランスにも配慮した。

徹底的な顧客視点のマーケティングで
返礼品の魅力を打ち出す

 守時氏は返礼品について、あえて深く知りすぎないようにしているという。多くの寄付を集めるには、担当者がいかに返礼品の詳細を語れるかが重要に思えるが、そうではないと断言する。

「無責任なレベルで客観的に見ているのかもしれません。100点が分かる地元の人は商品の細部を伝えたいと思うかもしれませんが、その他大勢はどのみち90点までしか分からないんですよ。和牛のA5とA3なんて、食べ比べたところで違いは分からない。それならA5よりもA3を安く買いたいと思うのが消費者なんです」