“東京化”せずに成功した自治体に学ぶ、「オンリーワン」の地方創生北海道の網走・北見地区は、冷涼な気候と晴天率の高さから、大学や社会人のチームなどもやって来る全国屈指のラグビー合宿地。東京から遠くても、生活は十分豊かだ Photo:PIXTA

「東京化」は地方の魅力をなくす
独自の魅力を見極めることが必要

 筆者は地方(北海道)出身者の1人として、地方創生に思い入れを持ってきた。特に筆者が勤務していた銀行は、地方を拠点としていたので、地域経済の活性化については使命感に近いこだわりを持っていた。

 筆者が生まれ育った北海道を離れて東京に移り住んだきっかけは、東京の英語学校に語学研修として勤務していた銀行から派遣されたことだった。この学校の同じクラスには、大蔵省(当時)、大手都銀、メーカー、東京証券取引所、カード会社などから派遣された優秀で英語にも秀でた仲間たちが大勢いた。

 ある日、学校の授業で将来ビジョンを英語でプレゼンするという課題が出され、筆者は「北海道を東京に比肩し得る経済圏に発展させる」という内容を披露した。すると、あるクラスメートから、東京と同じように発展してしまったら北海道独自の魅力がなくなると指摘された。筆者は、それまで北海道から出たことがなく、北海道の魅力を客観視できていなかったことに気付かされた。そして、東京出身のクラスメートから北海道の魅力を教えられることで、「ナンバーワンではなくオンリーワン」であることが大事だと知った。

 筆者の気づきから20年以上が経ち、筆者が勤務していた銀行は破綻し、北海道経済は疲弊した。しかし、その後、オーストラリア人や香港・シンガポール人を中心とした外国人が北海道の「オンリーワン」の魅力に気づき、その魅力が外国語で発信され、今や世界中から北海道に観光客が押し寄せている。

 観光客の増加は北海道だけの話ではなく、京都、長野、九州、東北などが地域独自の魅力を磨き、国内外の人々を惹きつけている。各地域が「東京化」しなかったことが良い結果を生んでいる。一部自治体での過剰な返礼品が問題視されたふるさと納税は、予算消化しか頭になかった自治体職員に地域の魅力を見直し、自ら資金を集めようという「やる気」を引き出した点で評価に値する。地方は、中央に依存することなく自分たちで知恵を絞っていく時代に入った。