終活で重要な相続。「自筆財産目録」に資産を記しておけば、親族間の争いを防げる。だが、書き漏れ一つだけで手続きが失敗する「落とし穴」がある。特集『お金の終活 シニアの資産運用&死に際のお金の管理』(全13回)の♯12では、不動産・保険・預金など、分野別に徹底解説する。
自筆財産目録で失敗する
「六つの落とし穴」とは?
財産目録の記載に書き漏れがあった。そのため、手続きがうまくいかず、身内で「誰が財産を相続するか」という争いが始まって「争族」になってしまった──。
少なからず、こんな経験がある人もいるだろう。
「自筆財産目録」は、相続手続きで必須の書類の一つだが、見落としがちなポイントが幾つかある。それが原因で、しばしば遺族が困ることがある。
今回、相続関連業務の経験が豊富な司法書士法人松野下事務所の協力の下、自筆財産目録で失敗する「六つの落とし穴」をまとめた(次ページ参照)。
一つ目は、自分名義の不動産が漏れなく記載されていないという落とし穴だ。
特に漏れが多いのが、私道持ち分と、原野商法などで購入した非課税の土地だ。非課税の土地は、課税明細書が届かないため、基本的に遺言者本人しか存在を知らないことが多い。
また複数人で共有している物件の場合も、その中の代表者一人にしか納税通知書が来ないため、見落としがちだ。
かつて高度経済成長期に流行した、原野など無価値の土地をだまして売りつける原野商法で土地を買ってしまい、課税明細書が来ないため遺言者がそのまま放置してしまうケースがある。
その後、時を経て相続人の数が増えるにつれて、「わざわざ無価値の土地を相続したくない」という人も出てきて、遺産分割協議が難しくなる。だから、あえて誰も触れたがらず、“パンドラの箱”と化してしまう。
これらの記載漏れが後日発覚すれば、相続手続きの不備という扱いになる恐れがあるため、注意が必要だ。
次ページでは、残る五つの落とし穴の詳細を大図解とともに明らかにしつつ、相続で後々もめないための「親族関係説明図」についても解説する。