濃淡あるも目立つ地元への就職
地方で活躍する優秀な卒業生のリアル
まず北海道大だが、1~5位までの顔ぶれは、北大、北海道大学病院、札幌市、北海道、北海道電力と21年から変わらない。大学やその関連団体、自治体、地元企業への就職を希望する学生が、いかに多いかがうかがえる。
とりわけ大学関連の「身内」に就職する傾向が強いのは、東大や京大も同様だ。理由として、国立大は研究・労働環境が恵まれていること、長引くコロナ禍によって民間企業の就職活動をセーブする学生が増えていることが考えられる。
また、本州から離れているという地理的な事情により、地元への就職を希望する人が多いであろうことが想像できる。民間企業では、北海道に本社を置くニトリへの就職者数も多い。
次に東北大を見ると、21年に続いて1位と2位が東北大学病院、東北大学となり、こちらも大学関連への就職が目立つ。続いて、宮城県庁、仙台市役所、大崎市民病院、国立病院機構仙台医療センター、仙台市立病院、石巻赤十字病院と、自治体や地元医療機関が特に多いのが特徴である。
民間企業では楽天イーグルスを運営する楽天グループへの就職が多い。地元愛の強さの表れだろうか。
筑波大は1位がNTTデータとなり、ヤフー、日本電気、ルネサスエレクトロニクス、ソフトバンクと電機・IT企業が多いのが特徴だ。コンサルティングや製薬への就職も多い。首都圏に近いことから卒業生の地元志向が比較的薄いことが考えられ、大都市に事業展開する様々な業界の企業に就職している。
ただし一方で、茨城県庁、日立製作所日立総合病院、茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンターなど、昨年は見られなかった自治体や地元医療機関への就職者数が増えている。
名古屋大は、21年に続きデンソーが1位、トヨタ自動車が2位となった。他にもアイシン、豊田自動織機などトヨタ系企業への就職が多く、名大ならではの傾向と言える。
日立製作所、三菱電機、キオクシア、ブラザー工業、富士通、川崎重工業など製造業への就職が多いことも、「モノづくり王国・愛知」のイメージとマッチしている。
大阪大は、21年に1位だった三菱電機が2位にランクを下げ、4位だった三井住友銀行がトップとなった。ダイキン工業、関西電力、村田製作所、パナソニックなど関西圏を地盤とする企業が目立つが、大都市圏であるためか地域色は比較的薄く、卒業生はバラエティに富んだ業界・企業に就職している。
神戸大は、21年と同じく神戸大学医学部附属病院が1位となった。神戸市役所、兵庫県庁など自治体への就職は多い。興味深いのは、大阪大ではランキング外だった大阪府庁に就職した人が10人もいること。同じ関西圏の大学としては、大阪大と比べてやや地元志向が強いように見える。
そして九州大の1位は、21年に続いて九州大学病院だった。就職人数は103人と圧倒的な多さだ。特徴的なのは、九州大学、九州電力、福岡県、福岡市、福岡銀行と、10位までのうち6つの就職先が大学やその関連団体、自治体、地元企業で占められていることだ。これは北海道大と同様、本州から離れた地域に立地する大学ならではの特色かもしれない。
主要国立大の就職先は、程度の差はあれ地元の企業・団体が目立っている。日本で地域活性化・地方創生が叫ばれて久しいが、地元出身者に加えて、全国から集まった優秀な学生たちがこれだけ地域で活躍しているという事実は、心強いと言えないだろうか。
*この記事は、株式会社大学通信の提供データを基に作成しています。
2022年春の大学別の主な就職先。就職先(企業・団体)の名称は、原則としてアンケート調査時点の各大学の回答による。また、大学通信の調査方法によって表記しており、正式名称と異なる場合がある。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。大学院修了者を含む。(調査/大学通信)