バフェット氏の
「いい人生」の秘訣は?

 バフェット氏が、今も熱心に投資の活動をしているのは、本人がよりお金持ちになるためよりも、他人から託されたお金を運用すべく、「仕事として」投資しているからだ。

 だから新しい投資銘柄を探すし、一方、一市民としてなら投資してもいいかもしれないけれども、投資家(仕事としての投資家)としては、理解できないものに投資できないとして、昨今では、AI(人工知能)に対する投資には距離を置く。正しいプロの態度だ。

 さて、投資だけでなく、バフェット氏の人生に対するアプローチがいい。前出の朝日新聞のインタビュー記事から引用させてもらう。

「もう何の欲もありません。私は92歳で、必要以上に多くのお金を持っています。65年間、同じ家に住んでいます。3軒も、5軒も、8軒も持ちたくはない。1軒で十分です。今の家が好きだし、仕事場から5分の距離にあります。子どもの成長などいい思い出がたくさんある。つまり、何もかもがいいんです。私は自分が理にかなっていると思う人生を生きています」

 人生に対するこの満足感と抑制された私生活が素晴らしい。凡百の億万長者にできることではない。

 直接の経験から言えないのが残念だが、人は大きなお金を持つと、つい下品な趣味の豪邸を建てたり、多数の高級車を所有したり、気まぐれに社会活動に精を出して見せたり、「トロフィー的配偶者」を持ったり、メディアに出続けたり、宇宙に行ってみせたり、したくなるもののようだ。しかし、バフェット氏はそうしない。そうしなくても満足している。なぜなのだろうか。