小悪党がやるような
ポジショントークではない

 バフェット氏は、2020年に日本の大手総合商社5社に対して、発行株数の5%をわずかに超えるところまで投資していることを公表した。

 バフェット氏に限らず、有名投資家がメディアへ登場する際には、その発言や行動が、自らの投資を利するための「ポジショントーク」ではないかと疑う必要がある。例えば、最も素朴には、商社株に注目を集めて株価を上げて、有利に売り抜こうとしているのではないか、といったことを疑うべきだ。これは、投資家としては「基本動作」の一つだと言っていい。売り抜こうとしないまでも、決算時点の株価を上げようとするといった意図を持つことは、プロ投資家の場合に十分にあるので気を付けたい。

 ちなみに、ポジショントークはもっと複雑なものになる場合もある。例えば売却したい株式を抱えたアクティビスト投資家が、MBO(経営者による企業買収)を前提としたTOB(株式公開買い付け)に投資先企業の経営陣を追い込むため、プレッシャーを掛けようとする場合などがある。大量の株式を市場で売ると株価が下がるので、TOBで株価を下げずに引き取らせたいという子悪党の魂胆だ。他の投資家にとっては、迷惑になることがある。

 今回のバフェット氏については、状況的にこうした心配はなさそうだ。同氏が経営していて投資の主体となっている会社、米投資会社バークシャー・ハザウェイは5大商社の株式を既に7%台まで買い増していることを発表している。バフェット氏はさらに今後9.9%まで買い増したいと発言している。

 当面商社株を売る気は全くなさそうだし、これから買い増しするなら、株価はむしろ安い方が好都合だ。そもそも長期投資が目的での保有だし、バフェット氏は商社の株価に影響を与えたいのではなさそうだ。

 もっとも、日本の商社に対する好意的な注目を集めたいという意図くらいはあるかもしれない。経営にはプラスの効果がある。バフェット氏は、自身がどのように注目されているかを十分に知っているはずだ。