バフェット氏から見た
日本の総合商社とは?

 バフェット氏は、自分で理解できない会社の株式を買わないことで有名だ。そして、日本の総合商社は、取り扱う商品やビジネスが多様で取引が複雑であること、他国に同様の経営形態の会社が少ないことなどから、一般に投資家にとって、特に株価に影響力の大きい外国人投資家にとっては「ビジネスが分かりにくい会社」だとされることが多い。20年にバフェット氏の商社への投資が発表された時、この点に関して世間は少々驚いた。

 だが、実質的にさまざまなビジネスに投資する投資会社だという点において、日本の大手総合商社はバフェット氏のバークシャー・ハザウェイによく似ている。日本の商社は、右のモノを左に売って薄いマージンの口銭を取るような問屋的ビジネスモデルから、資源開発などのビジネスに投資してそこから収益を得る投資会社的なビジネスモデルに主力のビジネスを転換している。

「貿易・流通機能付き投資会社」と呼んでもいいかもしれない。投資先の商品の取引に関わることで利益を得られる場合もあるし、投資先の支援になる場合もある。また、必要があれば、投資先に社員を送り込んで経営のサポートをすることもできる。投資会社としては、なかなかいい条件を備えている。

 また、財閥などグループ企業や取引先とのネットワークや、貿易その他のノウハウを持っているので、新規参入者が既存の大手商社のまねをするのは簡単ではない。

 なお、5社まとめて均等に投資するという、バフェット氏が今回日本の大手商社株投資に適用しているやり方は極めてうまい。

 大きな資金を投資するのに特定の一、二社では企業規模や時価総額的にキャパシティーが足りなかったという面があるかもしれないが、選別的に投資して大株主になられたら日本の商社は大いに警戒しただろう。

 5社均等なら他社と事情は同じで横並びなので安心するし、「ここから脱落してはいけない」と思うので各社に緊張感がもたらされる。「バフェットに途中で見捨てられた商社」になったら、特に財閥系の商社などはグループの会合で社長の顔がつぶれることになる。バフェット氏は日本人と日本企業を心理面までよく研究したのかもしれない。

 そしてもちろん、1社に絞るよりも5社に投資する方がリスク分散上明らかに好ましい。

 バフェット氏の投資術は、現在も進化中なのかもしれない。