古いバフェット像は更新しよう
単に「割安株投資」ではない

 バフェット氏の投資の通俗的な理解は、(1)自分が理解できるビジネスで、(2)株価が割安な企業に投資する、ということらしいのだが、これはかなり古い時期のバフェット氏の考え方だ。いわば「バフェット1.0」だ。

 現在に続く「バフェット2.0」では、(3)長期的に有効な競争力(参入障壁を含む)を持ったビジネス、であることを(2)以上に重視する。株価が割安であることは、投資における安全のためのプラス要素として(バフェット用語では「安全帯」として)それなりに重視されるが、より重要なのは(2)よりも(3)の方だ。

(3)は銘柄の選択に関わる問題である一方、(2)は主として投資する時期の問題にすぎない。

 利益を実現して課税されたお金で再投資することを繰り返すことよりも、ずっと保有し続けていられる競争力のある会社に投資することの方が価値は高い。そう気付いて、バフェット氏はある時点から投資スタイルを変更した。同氏はこうした考え方を得るに当たって、7歳年上の盟友であり、長年のビジネスパートナーであるチャーリー・マンガー氏の影響が大きかったと述懐している。

 例えば、彼の代表的な投資銘柄である米コカ・コーラは、強いブランド力、製造力、販売網、マーケティング力、グローバルなビジネス展開による成長力を持っている。仮に他社が清涼飲料水分野で有望な新商品(仮に冷たいハーブティーが当たったとしよう)を出した場合、コカ・コーラは間を置かずに同様の商品を投入して、ブランド力と販売力、マーケティング力などで、早期に対抗することができる。

 日本の総合商社にも、一朝一夕には他社にまねされにくい参入障壁とブランド力を持つところに評価できる点がある。単に「株価が割安だからいい」というわけではないはずだ。

 バフェット氏は今のところ、大手総合商社5社以外の日本株を少なくとも大量には保有していない。「株価が割安なら何でもいい」という投資家ではないので、古いバフェット像をお持ちの人は理解を更新しておく方がいい。

 東京証券取引所が最近「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」の企業に対する注意喚起を行ったこともあり、PBR1倍割れの企業や配当利回りの高い銘柄を「次のバフェット銘柄」として、もてはやそうとする向きがある。しかし、少々ピントがズレていると言わざるを得ない。

 今のバフェット氏は「単なるバリュー投資家」なのではない。