4つのスキルの中で最も重要なのが、「自己認識」です。

 まず、自分の感情を正確に認識できるようにならないと、それを管理したり制御したりすることができません。特に、感情の中でもパワハラにつながりやすい「怒り」について、生じるタイミングや要因を知ることで自己認識力を高める必要があります。

 人の感情の中でも、「怒り」は最もコントロールが難しいものです。ニュース等でも頻繁に、怒りのコントロールができずに悲劇をもたらしてしまった人を見聞きすると思います。カッとなって人を殴ってしまった、カッとなって煽り運転をしてしまった、カッとなって暴言を吐いてしまった……。

 職場でも、同僚や部下にイライラした結果、暴言を吐いてしまう人がいます。怒りは攻撃性を増大させるという特徴があるからです。

 同じ出来事を経験しても、それによって怒りが生じるかどうかは個人の信念や思考次第です。人は怒りが生じると「相手が悪い」と思いやすいですが、本当は自分の中にある信念や価値観が怒りを生じさせているのです。そのため、なぜ怒りを覚えたかの原因がわかれば、対策することが可能になります。

 自己認識力は、「感情の自己認識」「正確な自己評価」で構成されます。特に重要なのが、「感情の自己認識」です。

怒りを抱いた根本の
原因を見える化する

 自分の中に「怒り」が生じるポイントを知るために役に立つのが、「アンガーログ」という記録です(表2)。イライラした出来事があったら、その都度手帳や日記等に書き込んでいきます。

パワハラ上司になりたくない管理職必読! “怒り”の記録術「アンガーログ」のつけ方アンガーログの記入例。「怒り」という感情を細分化していくと、自分の信念や価値観に気づくことができる
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 その場ですべての項目を書かなくても、まずは「(1)日時と場所」「(2)出来事」だけ書き込んで、その日の夜などにその時のことを思い出しながら書いてもかまいません。

「(2)出来事(事実)」には、「事実」だけを書くのがポイントです。例えば、この欄に「部下が生意気な口をきいた」と書く人がいますが、これは誤りです。

 なぜなら、「生意気だ」と感じたのはその人の感覚であって、「事実」ではないからです。これを「事実」だと認識してしまうと、「生意気な口をきく部下が悪い」となって、自分自身の思考パターンを認識できなくなります。