相続税調査の本格化は
23年7月以降に始まる

 国税庁が行った海外資産に関する相続税調査では、16年から19年にかけて、申告ミスの件数も増えたが、20年に入り新型コロナウイルスの感染拡大を受けて申告ミスの件数が減少した。21年に再び増加に転じたが、それでも従前の件数には至っていない。これは相続税の無申告事案の調査実績でも、同様の傾向である。

 しかし、23年5月に新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行するため、今後は再び富裕層に対する相続税調査に力が入ることは明らかだ。それどころか、コロナ禍の中で国税庁が集めてきた富裕層の情報が、これから相続税調査で一気に活用されると考えるのが自然である。さらに国税庁は、前述したタワマン節税に関する「最高裁のお墨付き判決」という武器まで手に入れている。

 国税庁の組織は事務年度(7月から6月)の単位で人事が決まり、税務調査などの方針も変わる。23年7月に始まる新事務年度から、一気に相続税調査のギアが入ると考えておくべきだろう。

Key Visual by Kaoru Kurata, Kanako Onda, Graphic:Daddy's Home