アマゾンが創業されたのは1995年ですが、最初の10年間ぐらいは、「みんなで一生懸命頑張るぞ!」という気合いでなんとかなりました。しかしアメリカの本社だけで社員数が5000人を超えるようになると、気合いだけで動いた世界が、もう動かなくなってきたのです。

 OLPができたのは2006年~2007年です。とはいえ、それ以前も行動指針は存在していて、「コアバリュー」と「コアコンピテンシー」というものがありました。

 コアバリューはアマゾンの社員たちが持っていなければならない価値観であり、全部で7項目。その中には、Customer Obsession(顧客へのこだわり)やFrugality(質素倹約)など、現在のOLPにある項目と同じものもありました。しかしOLPのように評価がコアバリューに基づいて行われたり、日常の仕事の進め方に染みこんだりしていたかといえば、ノーです。

 もう1つのコアコンピテンシーは、「アマゾンのリーダーはこういう行動をとります」という、リーダーの指針です。その中には現在のOLPの項目であるDeliver Results(結果を出す)もありました。ほかには、かつてOLPの中にあり、今はもうなくなってしまったVocally Self Critical(間違いを認める)という項目もありました。しかしこの項目は、現在Earn Trust(人々から信頼を得る)というOLPの項目の中に吸収されました。

 このように、アマゾンにも最初からOLPがあったわけではなく、それまであった行動指針を踏襲し、練り直し、あとになってつくられたものなのです。

なぜOLPがつくられたのか

 コアコンピテンシーとコアバリューは同じような方向を向いているので、この2つを合体させてつくりあげたのがOLPです。

 最初はLeadership Principles だったのですが、何年後かにOurがくっついて、OLPという呼び方になりました。

 なぜこれがつくられたかというと、アマゾンが急激に成長するに従い、より明確な行動規範を定める必要があったからです。

 アマゾンのたどってきた道を振り返ると、ターニングポイントがいくつかあります。おそらくいちばん初めは黒字化したころ。創業以来ずっと赤字が続いていたのが2003年ごろに黒字化し、その後急激に大きくなり、全世界での売上が1兆円を超えます。そのころからいろいろな問題が山積みになってきました。