リーダーだけの指針ではない

 たまに誤解されることがあるのですが、OLP(Our Leadership Principles)に含まれる「Leadership」という言葉から「それはアマゾンのリーダー、つまり経営者や管理職、マネージャーのための行動指針ですね」と思われることもあります。でも、そうではありません。

 OLPのLはLeadership(リーダーシップ)のLであり、Leader(リーダー)のLではないのです。リーダーは役割を指すものですが、リーダーシップは役割に関係なく、誰もが仕事を通して発揮すべきものです。OLPは決して管理職とかマネージャーのものではなく、アマゾンのすべての社員のものなのです。

 おそらくOLPは当初、ある程度の役職についた人(リーダー)向けにつくったのではないかと思われます。しかしOLPをつくる途中で、これはリーダーだけでなく、全社員に必要だと気付いたのでしょう。

人事における最大のイノベーション

 私はOLPをつくりあげたことが、アマゾンの人事分野での大きなイノベーションだったのではないかと思います。

 OLPのような社員の心得や社是は、日本の企業にもあります。「お客さまを大切にしなさい」「従業員同士仲よくしなさい」などの言葉が社員手帳の裏に書いてあったり、社長室の壁や応接室に額に入って掛けてあったりするでしょう。しかし往々にして、ただのお飾りになっていることが多い。

 アマゾンがすごいのは、OLPを採用から評価、教育など人事の仕組みに取り入れたことです。だからただのお飾りではなく、まさにアマゾニアン(アマゾンで働く人)にとっての血肉になっている。

 いまやアマゾンの社員であれば、どんな人でもOLPの話をします。それくらい浸透している。なぜならOLPは自分の評価の軸であり、自分が部下を評価するときの軸だからです。だからその理念を完璧に理解していなければならない。

 いまアマゾンのビジネスをドライブしている人たちは、全部この基準で選ばれています。逆にいうと、OLPが実践できていない人は、どんなに優秀でも採用されない。