たとえば急激に扱う物量が増えたので、アメリカ中に新しく倉庫を建てました。新しく建てた倉庫には極力、ほかの倉庫にいるマネージャーを送り込むけれど、現場を管理するにはまったく数が足りない。そこで新規でマネージャーを大量に採用したり、マネージャーになるにはまだスキルが足りない人でもマネージャーに昇格させて現場に送り込んだりしました。その結果はものの見事に失敗。
倉庫で当然、考えなければいけない安全、品質、生産性が守れなかった。事故やケガが頻発。品質も基準を守れない。在庫はめちゃくちゃ、発送した商品が壊れていたり、注文通りに届かなかったり。生産性はガタ落ちでコストが膨大にかかってしまう。こんな状況でした。
OLPを考えた2人のジェフ
これをなんとかするために、「そもそもリーダーたちとはどういう行動をとらなければいけないのか」ということが、ベゾスや幹部たちのあいだで話題になります。
もちろんそれまでにもアマゾニアンがとるべき行動は、コアバリューとコアコンピテンシーに書いておいたけれども、状況が変わったので見直す必要が出てきました。
そのときワールドワイドのオペレーションのリーダーで、2020年に退任したジェフ・ウィルキが筆頭となって、「われわれのLeadership Principles のコアになるものをつくろう」ということで、試行錯誤を重ねながらそれをつくりあげていったのです。
私が聞いた話は、「みんなで1週間、山にこもって考えたんだよ」というものでしたが、最近、ウィルキが当時を回顧する記事を発表したところによると、少し違うようです。実際は彼が中心になって考えて、何回もベゾスとやりとりしながらつくりあげていったそうなので、ひょっとすると合宿はなかったかもしれません。もっとも当時から合宿はよくしていたので、合宿中に話題になったこともあるでしょう。
とにかくベゾスを中心としたエグゼクティブメンバーの中で、「アマゾンのリーダーはこうあるべきだ」という像を14項目にまとめました。それがOLPです。