各大学に共通する
人気就職先の意外な傾向

 まず、上智大で1位となったのは前年に続いて楽天グループだった。ランキング上位の顔ぶれは前年から大きな変化がなく、KDDIやNTTデータなどのIT・通信、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、日立製作所、日本電気(NEC)などの電機、東京海上日動火災保険、SMBC日興証券、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループなどの金融が目立っている。アクセンチュアをはじめ、コンサルティング業界への就職も増えている。

 一方で、上智学院(上智大の運営元)や横浜市など民間企業以外への就職者もいる。就職におけるオールラウンドな強さは、早稲田大学、慶應義塾大学に通じるものがある。

 明治大は官公庁を志す学生が多いことで知られるが、22年もその特徴がよくわかる結果となった。1位は前年に続いて国家公務員一般職、2位は前年4位の東京特別区だ。就職者数はいずれも60人以上とダントツである。

 民間企業では前年に続いて楽天グループへの就職者が多く、NECソリューションイノベータ、TIS、SCSKなどSIer(システムインテグレーター)にも強い。

 青山学院大は、前年に続いて1位の楽天グループと2位の日本生命保険が不動の強さを見せた。以前は航空業界への就職に強かったが、コロナ禍の採用抑制の影響か、近年その印象は薄い。

 22年の印象としては、SCSK、NTTデータ、ソフトバンク、トランス・コスモス、USEN-NEXT HOLDINGSなど、IT・通信への就職が増えてきた。

 立教大も、前年に増して官公庁への就職が目立った。1位は前年2位だった東京都特別区、2位は同7位だった国家公務員一般職だ。他にも埼玉県庁、横浜市役所などに就職実績がある。

 中央大と学習院大では、官公庁への就職がさらに目立つ。中央大は1位国税庁、4位横浜市役所をはじめ、国土交通省、神奈川県庁、総務省と幅広い。一方の学習院大は、1位が東京23特別区人事委員会、2位が東京都教育委員会。他にも東京・千葉・神奈川・埼玉といった首都圏の教育委員会、市町村に多くの卒業生を送りこんでいる。現在は特殊法人だが、日本年金機構も昨年に続きラインクインした。

 かたや法政大と東京理科大の就職先は、民間企業が上位を占めている印象だ。

 法政大は1位ドコモグループ、2位楽天グループおよび日本電気(NEC)となった。山崎製パン、ニトリ、三井不動産リアルティなど、消費者向けの製品・サービスを手がける企業に強いのが特徴だ。金融やITにも一定の就職実績を持つ。

 東京理科大は、1位NECソリューションイノベータ、2位アクセンチュア、3位富士通。10位内には、NTTデータ、日立製作所、SCSK、日本電気(NEC)、ソニーセミコンダクタソリューションズと、やはり技術系の企業が多い。大学と就職先のイメージが最もマッチしているケースと言える。

 関東主要私立大の就職先を俯瞰すると、公務員とIT系企業の人気が継続していることがわかる。

 公務員人気がここまで高いのは意外かもしれないが、実は有名私大の多くは以前から公務員を目指す学生を積極的にサポートしている。明治大、立教大、中央大、学習院大などは、専門の講座やセミナーを開催している。かねてより学生の安定志向が強まっているといわれる中、コロナ禍で民間企業の先行きに不透明さが増したことが、公務員人気に拍車をかけたのだろう。

 IT系については折からのDXブームの中、SIreやITコンサルなどで人材獲得競争が過熱した影響が考えられる。ITに明るい学生はもとより、IT未経験の理系学生や文系学生にも門戸を開き、入社後の研修で一人前のエンジニアに育ててくれる企業もある。有名私大出身の優秀な学生に熱い視線を送る企業は多いことだろう。

*この記事は、株式会社大学通信の提供データを基に作成しています。

【ランキング表の見方】
2022年春の大学別の主な就職先。就職先(企業・団体)の名称は、原則としてアンケート調査時点の各大学の回答による。また、大学通信の調査方法によって表記しているため、正式名称と異なる場合がある。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。立教大・学習院大以外は大学院修了者を含む。(調査/大学通信)