ChatGPTをはじめとした生成AIに代替できる業務が多く、将来の雇用が脅かされている法曹界にあって、果敢にゲームチェンジを仕掛けている組織がある。特集『ChatGPT完全攻略 最新・仕事術革命の決定版』の#6では、五大法律事務所の一角、森・濱田松本法律事務所だ。エリート弁護士集団の生き残り戦略とは。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
弁護士の労働時間2割削減の実績が
法律事務所の競争力に
弁護士といえば、裁判の証人尋問で、検事らと丁々発止のやりとりを展開する華々しいイメージがある。だが、現実は、何時間も図書館にこもって判例を調べ、裁判資料を作成するといった作業が業務の大半を占める地味な仕事だ。そして、判例の調査は、その巧拙が裁判の勝敗に関わるほど重要な仕事だった。
森・濱田松本法律事務所に所属する弁護士らも、東京・丸の内のビルに所有する蔵書7万冊の図書館に缶詰めになってきた。
ところが、ChatGPTなどAIの急激な進歩により、弁護士の働き方の常識は塗り替えられた。同事務所でAIの活用を進める飯田耕一郎弁護士は、「かつては判例などの探索が法律事務所や弁護士の『秘中の秘』のノウハウだった。だが、今後は探すこと自体の価値はなくなっていく」と言い切る。
同事務所は、弁護士が判断を下すための資料作りの大部分をAIなどに任せていく方針だ。そして、AIやITのシステムを組織内に抱え込むこともしない。
次ページでは、森・濱田松本法律事務所が仕掛けるゲームチェンジの具体的内容や、弁護士ドットコムによるChatGPTの活用の詳細を明らかにする。