企業法務の世界で圧倒的な存在感を放つのが五大法律事務所だ。500人超の弁護士を抱え、海外へと業務を拡大する五大による寡占化が進むが、そんな彼らの足元を揺るがしかねない三つのリスクが顕在化し始めている。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の#1では、弁護士業界の序列を激変させる地殻変動を解明する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
最大手の西村あさひは弁護士700人突破
東芝「圧力問題」で露呈した裏事情とは…
「国内最強のエリート弁護士集団」「敵対的買収から企業を守る守護神」――。そんな形容をされることも多い、日本の五大法律事務所。彼らは近年、さらなる膨張を続けている。
ダイヤモンド編集部は今回、日本法弁護士だけでなく、外国弁護士や外国法事務弁護士を含む弁護士数の過去10年間の推移を、各大手事務所へのアンケートを基に集計した(次ページ掲載)。それによれば、西村あさひ法律事務所には6月1日時点で国内最多の721人の弁護士が在籍し、10年間の純増数は251人に上ることが分かった。
さらに2位の森・濱田松本法律事務所は628人(10年純増数299人)、3位のアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は542人(同222人)と続く。いずれも毎年20~30人規模で増え続けている計算だ。
その理由は、クライアントである企業のグローバル化に伴う海外法規制への対応、アクティビスト(物言う株主)らによる株主提案や敵対的買収の増加などさまざまだ。ポストコロナ時代もM&AやESG(環境、社会、企業統治)への対応などで弁護士の活躍の場が増えるのは必至で、1000人規模の事務所が誕生するのも時間の問題といえる。
日本弁護士連合会によれば、昨年3月時点で日本国内には1万7417の法律事務所が存在する。このうち所属弁護士が100人を超える大手事務所は0.06%と、ごく一部にすぎない。その中で、司法試験合格者のトップ層を高額報酬で集め、大企業法務をほぼ寡占する五大は、弁護士業界序列の頂点に君臨する。
だが、五大が安泰かといえば、必ずしもそうとはいえない地殻変動が起きつつある。業界序列を揺るがしかねない五大に迫る三つのリスクの中身を見てみよう。