ChatGPTの大ブームの波に乗り、生成AIの主役へと躍り出た米マイクロソフト。出遅れた米グーグルも総力を挙げて猛追する。特集『ChatGPT完全攻略 最新・仕事術革命の決定版』#5では、2強がプライドを懸けた主導権争いの行方を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
「検索含む全ての製品を再構築」
グーグルI/Oで総力戦をアピール
「生成AIでわれわれは次のステップに進む。検索を含む全ての主力製品を再構築している」
5月10日、米グーグルが最新の取り組みを披露する開発者会議「グーグルI/O」の基調講演。約2時間の発表の大半はAI関連に費やされた。スンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)が冒頭のように発言したのは、グーグルが総力を挙げて生成AIに取り組んでいることを強調し、“出遅れ感”を払拭したかったからだろう。
7年前のこの場所で、ピチャイ氏は「AIファースト」を宣言した。傘下の英ディープマインドが開発した囲碁AI「アルファ碁」が人類最強とされたプロ棋士に勝利するなど、グーグルはAIのトップランナーだと目されていた。
ところが生成AIでは、サービス導入で後手に回った。主役に躍り出たのは、ChatGPTの開発元である米オープンAIに出資していた米マイクロソフトだった。
ChatGPTは2022年11月の発表からたった2カ月で利用者が1億人を突破。対話能力の高さから“グーグルキラー”と称賛されるようになった。
マイクロソフトは翌年1月、数十億ドルを追加投資すると発表し、2月7日には検索サービス「Bing」にAIを搭載してグーグルの牙城に攻め込んだ。
グーグルもその前日、対話型AIサービス「Bard」を発表してChatGPTに対抗しようとしたものの、“誤答”が発覚して株価が急落する事態に見舞われた。
さらに3月14日、オープンAIが生成AIの頭脳となる大規模言語モデルの最新版「GPT-4」を発表し、マイクロソフトはすぐさまBingに搭載した。
GPT-4は米国の大学入学試験や弁護士試験を解かせた成績が人間の上位10%に入るなど、専門家もその性能を絶賛。一方のグーグルは、AI研究の第一人者であるジェフリー・ヒントン博士の退社が5月1日に明らかになるなど、明るい話題に乏しかった。
加えてBingの攻勢が、グーグルの牙城を崩し始めていた。
次ページでは、マイクロソフトとグーグルの生成AIを比較するとともに、両社による主導権争いの行方に迫る。