「ジョブ型」の人事制度への移行が注目された日立製作所だが、実際には、旧来の年功序列的な給与体系が温存されている。だが、そうした一般社員をよそに、デジタルトランスフォーメーション(DX)事業に不可欠なデータサイエンティストには国内でも4000万円の年俸を用意し、人材争奪戦に参加していることが分かった。特集『日立 最強グループの真贋』(全12回)の#5では、日本型と欧米型の雇用慣行が混在し、格差が拡大している日立の実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
日立の給与テーブル大公開
我慢の20代から年収1億円まで
日立製作所は今年4月、本格的に「ジョブ型」の人事制度をスタートした。非管理職も含め、全社員のポジションにおいてジョブディスクリプション(職務内容を詳しく記述した文書)を作成する。
ジョブ型の人事制度では、ジョブディスクリプションで定めた各ポジションに求められる要件を満たす社員を、適材適所で配置する。年功序列ではなく、ポジションごとの難易度によって給料が決まる――というのが建前だ。
しかし、日本の代表的なレガシー企業である日立が、人事制度を刷新するのは難しい。リーマンショック後に人事制度改革にも着手してきた日立ではあるが、年功序列的な給与体系は温存されている。
実際に20代の若手社員は安月給の期間が一定程度続く“我慢”を強いられる。
その一方で、破格の待遇を用意しているポストもある。日立の産業向けデジタル化のソリューション「ルマーダ」の要となるデータサイエンティストには、一般社員の給与体系とは別の高額な年俸を提示していることが分かった。
日立グループでは、社員の「給与格差」がますます拡大しているのだ。その実態を詳しく見ていこう。