序列激変#特別編Photo by Toshiaki Usami

若手弁護士たちから注目を集めている法律事務所ZeLoとリーガルテック企業のLegalForce。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の特別編では、創業者で両組織を率いる小笠原匡隆弁護士と角田望弁護士に、将来像と強み、創業のきっかけを聞いた。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

4年前から世界ががらりと変わった
留学していたら起業も独立もしなかった

――森・濱田松本法律事務所から独立した経緯を教えてください。

小笠原 次世代のトップファームをつくろうという気持ちを漠然と持っていました。起業家の方や他の弁護士に話を聞いている中で、テクノロジーを掛け合わせることが、次の時代の最適な戦い方だろうと思ったのです。

 弁護士になって4年目。米国などから破産法の専門の弁護士は、AI(人工知能)に代替されるというニュースが出てきて、日本にもこの流れはやって来ると思いました。

角田 当時は、自分たちのアイデアを自由にやってみたいという気持ちが強かったように思います。リーガルテックという言葉も、今ほど認知されていませんでした。今あるビジネスモデルを、当時は明確に描けていたわけではなく、将来像はかなり粗い状況でしか見えていませんでした。

――森・濱田松本にいた頃は、小笠原さんと角田さんはどのような分野が専門だったのでしょうか。

小笠原 私は主に事業再生と知的財産です。M&Aもやっていました。

角田 私はコーポレートといって、国内の企業間の紛争やガバナンス関係ですね。比較的広くやっていました。

――4年目あたりは、五大法律事務所のアソシエイトにとっては留学のタイミングですが、留学はしたのでしょうか。

小笠原 留学はしていないです。米国からテクノロジーを活用した法律事務所や弁護士の話が聞かれるようになっていたときに、留学するかどうかというのは、ある意味、将来の選択を迫られているというふうに思いました。

 というのも、留学する2年間で法律事務所を取り巻く環境はガラリと変わってしまうと思ったのです。焦りに似た気持ちがありました。

――留学している間に、海外の最新のリーガルテックを学ぶこともできたと思うのですが、それはしなかった。

角田 そうですね、当然その議論もあったのですが、実際には留学するとかなり時間を取られてしまいます。留学準備で1年、大学で1年、現地のローファームで1年。その後、帰国して事務所に復帰してすぐに辞めてしまうのはあまりにも不義理なので、1年は事務所で働く。留学するとなると、最低4年の時間がかかってしまいます。

 実際、今は当時から4年たっていますが、ものすごく変わりました。仮にあのとき留学すると決めて、今起業するかどうかと考えると、起業も独立もしていなかったと思います。だから、あのタイミングで留学せずに独立・起業して良かったと思っています。