ジョブ型化や大規模な制度変更は、いますぐストップすべきだ

 組織は、外部適応と内部統合の両方をバランス良く達成する必要がある。

 外部適応とは、外部環境の変化、特に市場環境や技術環境の変化に対応することであり、これには新たなビジネスモデルの開発や新たな技術の導入、変化に対応した業務フローの改革などが該当する。

 一方、内部統合とは、組織内部の権限体系や調整機能、処遇の体系、そして組織の文化や価値観の統一を図ることを意味する。なかでも人事制度や基幹情報システムの構築などは、内部統合の重要な構成要素だ。基本的には標準化・形式化を図る行為である。

 外部環境が徐々に変化するときは、外部適応と内部統合を共存させていくことは比較的容易だ。しかし、外部が劇的に変化するときに、そのバランスを取るのは容易ではない。

 劇的に変化している今、人事制度や財務会計システムといった内部統合の改革が、過去のパラダイムに基づいて実施されると、外部適応のための変化を阻害する悪質な要因になる。つまりAI時代にもかかわらず、旧来基準でジョブ型導入を進めていると、AI時代に取り残されるリスクが大きくなるのだ。

 経営理念の浸透など時代を超えて通用する根本的な要素以外は、常に外部適応が先であり、内部統合は後なのである。順番を間違えてはいけない。

 よって、経営者は、蛮勇を振るって前世代の世界観に基づいた内部統合のための改革を停止すべきである。変化そのものを絶対視する人や、いったん決めたことは変えてはならないと主張する人、外部適応と内部統合の区別が出来ない人からは厳しく非難されるかもしれないが、進行中であっても、プロジェクトをやめることはリーダーの重要な仕事である。

 今ほど一度立ち止まり、過去の計画を捨てることが求められる時代はない。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)