一つには、金融引き締めの時期や程度などの予想が難しいし、それ以上に、将来の予想は市場の参加者によって株価に織り込まれてしまうことが問題だ。必然的に、株価の大きな変化要因は「予想しなかった出来事」となる。調節をうまくやるためには、市場参加者一般よりも優れた予想力を持っているのでなければならない。

 しかし、マクロ経済の将来の予想力は専門家も素人もひっくるめて「ドングリの背比べ」なのが現実だ。従って、予想によって運用内容を改善することはプロにも難しいのだ。

 筆者も含めて専門家はマーケットの先行きについてコメントするが、それは他人よりも有効な予測能力を持っているからではない。職業上の必要性からそうしているだけなので、運用内容までいちいち影響されないでほしい。

 結局投資家としては、インフレの前半か後半かといった判断には無関係に、長期的にはインフレの影響はリスク資産のリターンに反映するだろうと期待して、リスク資産を自分にとって適当な金額だけ持ち続ける以外にできることがない。

 その時々の株価が、将来の予想を反映して形成されていて、そこに参加するのだと割り切ると腹は立たないはずだ。ただし、日々の状況の変化によって株価は大きく変化するのでハラハラするのは仕方がない。これも、インフレであろうとなかろうと同じことだ。

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 資産運用について考えるに当たって、インフレについては特に気にする必要はないのに、金融界をはじめとする世間は「インフレでお金が目減りしないようにしないと大変だ」と騒ぐのが常だ(長いデフレの間でさえそうだった)。

 しかし、インフレの程度と時期を他人(市場参加者一般)よりもうまく予想できない以上、今後もインフレが続くと決めつけて「インフレ向きの資産運用」に資産を振り向けることは過剰反応なのだ。