税務署に狙われたが最後
「追徴課税」の平均は886万円

 ここ10年間の生前贈与の納税額の統計を見ると、申告者数は50万人前後で推移しているが、贈与税の納税額は上昇しており、贈与の額が増加傾向にあることが見て取れる。

 このようにいまや当たり前になりつつある相続税対策。相続や贈与のルールは非常に複雑で、正しい知識がないと、得するつもりが逆に損をしてしまったり、思わぬ落とし穴にはまってしまったりする恐れがある。

 また、節税にばかり目を向けるのではなく、“争族”対策にも留意しておきたい。遺産分割に関する事件(家事審判・調停)の件数は、1985年の約2・4倍に増加。20年は1万4000件を超えており、遺産を巡る家族間の諍いは、実に1日当たり40件起きている計算となる。

 争族になると家族の絆が壊れるだけでなく、金銭的な損害もある。相続税の申告期限内に遺産分割ができない事態に陥ってしまうと、さまざまな相続税の控除が受けられず、本来ならば支払わなくてもよいはずの税金まで、いったん納める羽目になるからだ。

 そして相続税対策は、いわずもがな税金の支払いをできるだけ免れようとする行為であり、税務調査のリスクが付きまとう。

 特に生前贈与に関する税務署の目は厳しく、やり方を間違えると即、税務調査の対象となる。多くの場合、過少申告加算税や重加算税が課され、節税どころかかえって損をすることになりかねない。

 実際に、税務署の調査官は、事前にほとんどの調べを終えており、実地調査はその答え合わせである。つまり狙われたが最後だ。国税庁の資料によれば、直近5年間の税務調査で申告漏れや脱税が指摘された「非違件数」の割合は実に8割以上。税務署が来れば、高確率で追徴課税されてしまうということだ(下図参照)。

 本特集#9『「妻に自宅を贈与」で損する場合も!生前贈与でやってはいけない落とし穴』、#10『「認知症に備え家族信託」が“争続”の火種に!相続でやってはいけない落とし穴』、#11『「親の口座から生前に葬式代」でペナルティー!相続税の税務署対策でやってはいけない落とし穴』では、生前贈与、相続、税務調査における対策で落とし穴にはまりやすい10大事例と、その解決法を解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。

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