夫婦関係は一筋縄ではいきません。意見がぶつかることもあるものです。しかし、10年の歩みを振り返ってみれば互いに感謝することも多いはずですし、振り返りができるのが錫婚式の良いところといえます。感謝している人もたくさんいますが、照れがあったりタイミングがなかったりして、なかなか気持ちを伝えられないこともあると思います。錫婚式が相手への感謝を示す節目として広まっていけば、夫婦の絆を深め、改めてお互いの大切さを認識することができます。

 錫婚式の申し込みの時点で「妻に感謝の意を伝えたいので錫婚式をやりたい」「日常ではなかなか言えないのでサプライズの錫婚式にしたい」と希望される男性もいました。

書影『つなぐ 100年企業5代目社長の葛藤と挑戦』『つなぐ 100年企業5代目社長の葛藤と挑戦』(幻冬舎メディアコンサルティング)
能作千春 著

 アンケートでも「結婚した当時のような気持ちになれた」「互いを大切にする気持ちが強まった」「信頼関係や夫婦仲がいっそう良くなった」「互いにたくさん話すようになった」「優しく接することができるようになった」といった声が多く、夫婦が改めて向き合う機会が求められていると私は思うのです。

 子どもがいる夫婦の錫婚式では、夫婦が互いに感謝し、これからも仲良く幸せに過ごしていきましょうと誓い合う姿に、子どもが感動し、なかには涙を流す子どももいます。そうした場面に立ち会い、私は錫婚式サービスを始めてよかったと思います。

 事業として錫婚式を盛り立て、錫製品の認知度向上や売上に結びつけていきたい思いはあります。しかし、世の夫婦が錫婚式によって10回目の結婚記念日に互いに向き合うことが、今後、日本の慣習となり、文化として根付かせていくことができればとても大きな意義があるのではと考えています。