「モノ」と「コト」を提供して
人生に寄り添う

 コンセプトと内容を見直したことで、錫婚式は夫婦や家族にとって満足度が高いアニバーサリーイベントになり、サービスを利用する人たちが増えていきました。

 結婚10周年に至るそれぞれの夫婦や家族には、何ものにも代え難いそれぞれのストーリーがあります。例えば、入籍時には離れて暮らしていたり予算がなかったりして、結婚式を挙げていない人がいます。妊娠中だったので着たいドレスを着られなかった人もいます。結婚後の10年はさらにさまざまで、仕事の苦労があったり、子育ての苦悩があったり、そして、いくつもの困難を乗り越えてきたことについて、パートナーへの感謝の気持ちがあります。私たちは、二人の足跡をしっかりと振り返ることが良い錫婚式にするポイントだと考えました。そこで、夫婦それぞれに詳しくヒアリングをして、互いの気持ちを包み隠さずに伝えられるオーダーメイド感覚の式づくりを目指しました。子どもがいれば、その子にもメッセージを伝えたり誓いの刻印に参加したりするなどの役割を担ってもらい、10年の節目に、改めて家族の一体感を醸成できるような式にしようと考えました。

 こういった取り組みに力を入れていくことで、錫婚式での私たちの役割も明確になりました。私たちはただ錫婚式サービスを提供するのではなく、夫婦と家族の人生に寄り添う存在です。

錫にちなんだ独創的なセレモニー錫にちなんだ独創的なセレモニー 写真:幻冬舎メディアコンサルティング

 私たちは「モノ」づくりの会社です。産業観光に関しては「コト」を提供しています。そして、錫婚式を始めたことで、私たちはそれ以上の役割を担う存在になっていきたいと思ったのです。

 私は企画者として、ほぼすべての錫婚式に打ち合わせ段階から関わり、挙式当日も進行役として参加しています。挙式後はヒアリングをして、今後より良いサービスの提供ができるように施策を練っています。

 錫婚式は、富山県外から旅行を兼ねて参加する人が多いため、会場で提供するフルコースの料理には富山の食材を使うことを検討したり、子どもが退屈しないようにキッズコーナーを充実させたり、セレモニー会場の整備を続け、より満足度を高める空間づくりを目指しました。錫婚式を運営する社内のメンバーや協力先の会社からも意見を募り、さらなる改善に役立てました。