胃のケアをすることは脳(メンタル)によい影響をおよぼす――。消化器内科医療の最前線を牽引するドクターが、最新の遺伝子研究と2万人の臨床データから導き出した「脳と胃に良い食品」を紹介する。本稿は、一石英一郎『「胃」を整えると自然と「不安」が消えていく』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
大量のエネルギーを必要とする
「脳」に必要な栄養素とは?
私たちの脳は大変厳密に管理されていて、“血液脳関門”というバリアがあり、有害なものをブロックしたり、脳の中の不要な物質を排出しています。
また大量に脳に入ると麻薬中毒のような症状を引き起こすドーパミンといった快楽物質、血圧を上げるアドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモンもブロックされています。
脳のエネルギーになるものはおもにブドウ糖ですが、最近ではケトン体という飢餓状態になると増える物質も、非常事態時の脳のエネルギー源として注目されています。
脳は体重の約2%しか重量がないのに、エネルギー消費量は全体の約2割と非常に大量のエネルギーを必要とします。
ブドウ糖が足りなくなる(低血糖状態)と恐怖、不安、怒りなどの否定的感情が起こりやすくなります。血糖異常はうつ症状を引き起こしますが、これにはビタミンやミネラルの欠乏も関係しています。
ビタミンは脳の機能を維持するために重要な栄養素です。脳はブドウ糖をそのまま使うのではなく、ATPという形に変換してエネルギー源としています。このエネルギー代謝で必要とされるのがビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ニコチン酸)などです。
また、ビタミンB6(ピリドキサール)、パントテン酸、葉酸は神経伝達物質を合成するときに使われます。
ビタミンが欠乏すると、エネルギーがうまく回らないので疲れやすくなったり、不安感から過敏となり、怒りっぽくなります。
ビタミンB1は脳内でブドウ糖を水と二酸化炭素で分解してエネルギー変換する際に必要です。“道徳ビタミン”とも呼ばれ、ビタミンB1が不足すると攻撃的になり、協調性や道徳性が低下します。
ビタミンB1は穀類の胚芽、牛肉、豚肉、ナッツ類、豆類などに多く含まれます。
ビタミンB3も脳のエネルギー代謝には必須の栄養素です。肝臓ではビタミンB3が合成されますが、脳内ではつくられません。欠乏すると、うつ症状、情緒不安定、刺激に対する感受性が増す、短期記憶が悪くなるといった症状が出ます。ビタミンB3は酵母に豊富で、牛肉、ナッツ類、豆類、穀類、魚肉に含まれます。