「大阪」沈む経済 試練の財界#3Photo:Peter Bischoff/gettyimages, 123RF

「70年万博」の夢よもう一度――。2025年大阪・関西万博への期待が高まるが、会場建設費は当初予定から1.5倍に膨れ上がった。財界幹部企業を中心に1社10億円のノルマが課されたが、「見返りはない」と突き放す声も。20回超にわたり配信予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#3では、苦しい寄付集めの内情を財界人の本音と共にお伝えする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

財界人も胸躍らせた「70年万博」の再来に期待
建設費は1.5倍、寄付集めは苦しく…

「そらあ、期待してますよ。ワクワクしてます」――。1970年に大阪府吹田市の千里丘陵で開催された万国博覧会を訪れた当時を思い出し、顔をほころばせるのは、ある大阪財界の幹部の一人だ。

 太陽の塔。月の石。テレビ電話。テーマ「人類の進歩と調和」に合わせて設けられたパビリオンや展示物に胸躍らせた記憶は色あせない。64年開催の東京オリンピックに並ぶ、日本の高度経済成長期を象徴する国家的イベントだった。

 2025年、その万博が再び大阪にやって来る。大阪湾岸の埋め立て地・夢洲を舞台に開催される大阪・関西万博のテーマは、成熟社会に合わせた「いのち輝く未来社会のデザイン」。医療やヘルスケア、SDGs(持続可能な開発目標)、IoTに関連する展示やパビリオンが計画されている模様だ。

 ただし、先立つものはカネ。会場建設費は当初、1250億円とされ、国、大阪府市、民間で3等分し、417億円ずつ負担することとした。民間分は大阪や関西の経済団体が各企業から寄付を募った。

 地元財界の関係者によると、18年の大阪での開催決定を受けて、関西経済連合会(関経連)が主導して寄付金集めが行われた。関経連の松本正義会長(住友電気工業会長)は19年11月の記者会見で、寄付金について「200億円のめどは付いた」と発言。だが、これでも当時の目標の半分にすぎない。

 ところが会場建設費は20年末、1.5倍の1850億円に上昇。設計変更や、会場の暑さ対策が必要になったためという。民間の目標額も1850億円の3分の1に当たる617億円に膨らんだが、新型コロナウイルスの感染拡大や急激な物価高など、企業の経営環境はむしろ悪化。今なお続く寄付金集めは、集める側、寄付する側の双方にとって悩みの種となっている。

 次ページからは、寄付金集めに苦しむ地元財界人の本音を基に、寄付金に対する空虚な“ご褒美”の存在に加え、地元財界関係者から漏れ出る「恨み節」を明らかにする。地元発祥の巨大グループが寄付金集めで矜持を見せた一方、不祥事や経営不振で寄付どころではないエネルギー会社や鉄道会社といった地元の名門企業の苦悩も紹介する。