「大阪」沈む経済 試練の財界#12Photo:JIJI

関西経済は復興できるのか――。今から20年以上前の「週刊ダイヤモンド」1999年9月25日号では、関西経済連合会の秋山喜久会長と大阪商工会議所の田代和会頭の財界両トップ(肩書は当時)を直撃し、そんな問いを投げ掛けている。景気低迷期に突入した当時、財界の最大のテーマは「関西の再生」。両首脳のインタビューからは、今も大阪・関西が抱える難題が浮かび上がる。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#12では、当時のインタビューを掲載。首脳たちが提示した再生への“処方箋”を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

関経連・秋山氏「官需要依存で生産性上がらず」
「道路からITへの投資で国際競争力を高めよ」

秋山喜久・関西経済連合会会長(関西電力会長)

――関西経済の現状は。

 関西は中小企業の街といわれるが、その中小企業はいわゆる素材型が多いため、景気の波の影響をいち早く受けた。その落ち込みが、深く長く続いている。関西の素材産業は全国に先駆けて設備をつくったため、設備は老朽化しており、過剰感も大きい。

 ただ、早く落ち始めたぶん在庫調整も早く進み、関経連が最近実施したアンケートでは「先行きよくなる」と答えた経営者が大幅に増加した。まだ跛行(はこう)性はあるものの、全体的にはよくなってきている。

――関西経済の地盤沈下が進んでしまったのはなぜか。

 そもそも関西は民主導の経済だが、ここ10年ぐらいは関西国際空港など官公需要への依存が高まった。そのことがややマイナスに作用し、中小企業の生産性があまり上がっていない。

 また、シロモノ家電に代表される関西の電機メーカーが海外へ生産をシフトしたり、あるいはリストラの一環で部品の内製化率を高めたりしたことで、中小企業の技術と大企業の能力が必ずしもうまくリンクしなくなってしまった。これらのことから、新しい産業構造形態への転換が遅れてしまったことが(地盤沈下の)原因だ。

過去特集

――就任直後に関西経済再生特別委員会をつくり、自ら委員長として再生シナリオづくりに当たっているそうだが。

 戦後最大の不況を癒やす対応策として、政府は約100兆円の公共工事中心の投資を実施し、その効果が出てきて景況に底打ち感が出てきた。ここまでが第1ラウンド。

 一方、1993年に1位だった日本の国際競争力は、今年は16位ぐらいに落ちている。この競争力を回復するため、産業構造をどのように転換していくかが第2ラウンド。そして第3ラウンドが財政構造改革だろう。

 第2ラウンドでは、例えば道路などに多額の投資をするより、IT(インフォメーションテクノロジー)産業に投資した方が、第3ラウンドの財政構造改革につながる。

 そういう大きな時代の流れの中で、では関西はどうするのかを考えている。高邁(こうまい)な理論ではなく、具体的なアクションプランを、(1999年)10月末までに発表する予定だ。

関西経済連合会の秋山喜久会長は20年前の時点で、産業構造の転換のために、道路などインフラへの投資よりもIT投資へのシフトを示唆している。次ページでは、秋山氏は関西だけでなく現在でも日本全体が抱える問題点を指摘し、関西という地域が持つ“強み”を十二分に生かした再生シナリオを紹介する。また、中小企業の会員を多く抱える大阪商工会議所の田代和会頭は、大阪をコンテンツ産業の拠点にする構想を唱えていた。具体的な構想の中身を紹介する。