次に割安か割高かの指標でもあるPERについてだが、今の日本株のPERは約15倍であり、先進国平均が18倍、アメリカが23倍であり、日本は今の水準でも割安と考える。
ちなみに日本のPERも先進国平均の18倍まで到達すると、たとえEPSが2200円で変わらずとも2200円×18倍=3万9600円という株価が想定できる。すぐには到達できなくとも、中長期的には十分可能性のある数値と考えている。
実需としての不動産市場は
ピークアウトの可能性
一方で不動産であるが、一般財団法人日本不動産研究所など、複数の定点観測できるリポートを見ていると、次の三つの傾向がある。
・富裕層向けのハイエンド不動産(要は高級マンション)の人気は高い
・マンション、戸建てともに価格は上昇しているものの上昇ペース自体には陰り
・一方で在庫は増加
つまり「実需」としての不動産はそろそろピークアウトの可能性が出てきている。一方で都心の一等地などのマンションは引き続き好調であり、富裕層の実需ではない、キャピタルゲイン狙いの購入は引き続き根強い。
ちなみに富裕層の中には円安により割安になった不動産を狙う海外の投資家も含まれている。実際、実需ではない投資用の1棟モノ収益不動産に関しては、東京だけでなく、大阪、京都、沖縄なども東京と同じ利回りまで価格が上昇しており、富裕層の旺盛な投資意欲は現在も衰えていない。
「出口」も考えて
投資先を選ぶべきだ
最後に、投資の「出口」についても触れてみたい。
株も不動産も金も投資には必ず、出口も考える必要がある。
上場有価証券の売却時には20.315%が課税されるが、売買手数料については世界的な引き下げ競争により、ネット証券を使えばほぼタダ同然になってきている。
一方、不動産は保有期間によって異なり、5年超で20.315%、5年未満で39.63%もの譲渡税が課税される(個人の場合)。さらに購入時に不動産は仲介手数料が購入額の3%+6万円かかるし、登録免許税や不動産取得税が合計で原則5%もかかる。
ちなみに金に関しては投資対象が現物か指数かによって異なるが、現物の場合は、所有期間が5年以下だと短期譲渡所得となり、増えた分が総合課税となって、他の所得と合算され課税される。しかし、5年超だと(売却益-特別控除50万円)×1/2×税率になるので、所得が半分になるメリットがある。
一昔前に岸田文雄首相が就任直後、金融所得課税を20%から30%にしようとして猛反発をくらったのも、この出口のところで業界の不満を買ったのではないだろうか。
企業の売却で財を成したある富裕層は『出口を考えずに投資をしている人があまりにも多い』と言う。また東北のある大地主は『不動産を持っているから、今まで株式投資をしていなかったが、インフレ対策として、かつ資産運用立国という観点でも国策に乗っかっておいた方がいいよね』と言う。
このように割安か否か、出口はどうかと総合的に考えると、インフレ対策として投資をする場合に第一に選択すべきは上場有価証券だと考える。我々は、ついつい投資というと入り口のことばかりで「何を買うか? いつ買うか?」ばかり気になってしまうが、出口も考えながら投資をすることをおすすめしたいと思う。