地政学リスクには強いが
今は買いにくい金
まずは、金について解説したい。
金は1グラム1万円を超えたことが最近話題になったが、そもそも金の値段はドルに連動しているということを知らない投資初心者は多い。
金のドル建ての値段は現在、1トロイオンス1950ドル。つまり日本円の1グラム当たりの金価格は、
1950÷31.1035G×147円=9216円
ということになる。ドル円相場が円高になれば金価格は下落する可能性がある(意外と円高のときのドル建て金価格は上昇しがちだが)。為替水準が1ドル150円に近付いており、さらに日米金利差が今後縮小しそうなことを考えると、短期的に円安の終わりも想定できるので、「今からでも金を積極的に買えるのか」というと正直買いづらい。しかし金は有限であり、地政学リスクにも強い(上がる)という点では、いずれは持っておきたい。
日経平均4万円が
非現実的ではない理由
次に株だが、以下の式で値段を説明できる。
Pは株価のPRICE。
EはEARNINGSのE、つまり利益。
RはRETURNで投資家の期待リターン
GはGROWTHで成長率である。
たとえば分母が変わらず、インフレを理由に価格転嫁できる優良企業はEの数値を大きくすることができる。よって株価であるPRICEは上がることになる。例外はあるものの、一般的にインフレになると株価は上がるというのはこういうことである。とくに上場企業はいわゆる優良企業の集まりだ。
※実際にはインフレの進行過程でRやG、そしてEの各ファクターが瞬間的にそれぞれ影響を与えて変動することになる。
インフレ=株価の上昇、というのはなんとなく頭でわかったとしても、「実際本当なのか?」と思う人もいるだろうから、やや極端だが具体例を挙げてみたいと思う。
トルコは、最近再選されたエルドアン大統領が中央銀行の金融政策まで口を出すような独裁国家だが、過度な金融政策の副作用も災いして、激しいインフレが進んでおり、2023年現在約40%のインフレ率である。トルコの日経平均株価に相当する代表的な株価指数であるイスタンブール100は2020年までは1000をうろうろしていたが、現在は8000弱で推移している。株価はインフレだけを理由に上下動するものでもないが、一つの原因と言える。
また、株価はPER×EPSの式に分解できる。PERとは株価収益率であり、EPSは1株あたり利益のことである。もう少しかみ砕いて説明すると、PERとは「株価は何年分の利益を織り込んで値付けされているのか」ということであり、EPSとは「その会社が1株あたりいくらの利益を稼いでいるのか」を数値化したものである。
現在の日経平均株価全体ではPERが約15倍でEPSが約2200円なので、株価は15×2200=3万3000円と説明ができる。東証のPBR1倍超え要請もあって、今後ますます米株のように自社株買いが起こることが想定されるので、日本株のEPSのさらなる上昇が期待できる。