海底ケーブルの建設ラッシュが続く中、日本電信電話(NTT)と三井物産が約620億円をかけて太平洋に海底ケーブルを新設する。近年の大型プロジェクトは米IT大手が参画することが多いが、今回は「オールジャパン」で挑む。しかし、NTTが狙うビジネスと、“失敗”を挽回したい三井物産にはそれぞれ異なる思惑がありそうだ。特集『日本経済の命運決める 海底ケーブル大戦』(全7回)の#2は、過去最大の太平洋横断海底ケーブルプロジェクトの舞台裏に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
NTTと三井物産は「相思相愛」の
オールジャパンで太平洋横断海底ケーブル
「三井物産とは“相思相愛”だった」――。
こう語るのはNTTグループで25年近く海底ケーブル事業に携わる、セレンジュノネットワーク(セレン)の佐藤吉雄社長だ。
日本電信電話(NTT)と三井物産が、日米間をつなぐ過去最大の海底ケーブル建設で手を組んだ。日米間をつなぐ海底ケーブル「JUNO」を建設・運営する新会社セレンを7月に共同出資して設立。出資比率はNTTグループと三井物産がそれぞれ約37.5%、JA三井リースが約25%だ。
日本側は千葉県と三重県、米国側はカリフォルニア州を結ぶJUNOの総延長距離は約1万kmで、通信容量は毎秒約350兆ビットと日米間で過去最大となる。総事業費は約4.5億ドル(約620億円)で、2024年末に完成予定だ。また、海底ケーブルシステムの供給はNECが受注した。
海底ケーブル業界は建設ラッシュに沸いている。米調査会社テレジオグラフィーによれば、23年の市場規模(建設総額)は約48億ドルと10年以降で最大となる見込みで、24年も判明分だけで約33億ドルと大型事業がめじろ押しだ。
近年の建設ラッシュをけん引するのはグーグルやメタ(旧フェイスブック)などの米IT大手で、出資者として参画するケースも少なくない。しかし、JUNOはあえて「オールジャパン」にこだわり、NTTと三井物産、JA三井リースの3社で建設する道を選んだ。NTTが海底ケーブル事業で大手商社と手を組むのは初めてだ。
なぜNTTと三井物産はタッグを組んだのか。
次ページでは、NTTと三井物産が「意気投合」した経緯やオールジャパンにこだわった狙い、三井物産が挽回したい海底ケーブルでの“失敗”、過去最大の太平洋横断海底ケーブルの顧客候補は誰かに迫る。