地政学を知れば、世界が分かる。特集『対話で分かる地政学』(全14回)の#1では、それぞれの悩みを抱える、架空の3世代家族の前に地政学の“第一人者”である、奥山真司氏が登場。われわれにも影響を及ぼす世界の情勢が分かる道具こそ地政学だと説く。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希、監修/地政学・戦略学者 奧山真司)
■登場人物・設定
中央=母:大屋 恵(めぐみ)(45歳) 単身赴任中の夫がいる。大学卒業後に大手企業に勤めたが、長男の出産を機に退職。長男の大学入学後に近所の中小企業に入社し、経理として働いている。大屋家の財布のひもも握る。
右=次男:大屋 陸(りく)(13歳)
中学受験に失敗し、今は公立中学校に通う。来年に高校受験を控える。勉強は得意でなく、ゲームが大好き。YouTubeなどで妙なインチキ情報に接しがち。
「食事中にゲームはダメって言ってるでしょ!というか勉強はしたの?」。またか。夕ご飯を食べ始めようとした陸は、母の恵からの詰問にため息をついた。横に座る祖父の明は、恵のあまりのけんまくに、食べようとしていた好物のコロッケを落としかけた。
「じゃあいいよ、ご飯要らない。ごちそうさまでした」。ゲーム機を食卓に放り投げながら、嫌みたっぷりに陸が言い返すと、母の怒りは沸点に達した。
「うぅ……。そんなことやってると、高校受験も失敗するよ!」。部屋を出ようとしていた陸の足が止まる。恵は「怒りに任せてひどいことを言ってしまった」と謝ろうとしたが、時すでに遅し。