鳥獣保護法や動物愛護法などの観点から行政規制に詳しい、城南中央法律事務所(東京都大田区)所長の野澤隆弁護士に見解を求めたところ、意外な答えが返ってきた。「人気マンガ『美味しんぼ』13巻(1988年初版)の中にある『激闘鯨合戦』の内容が非常に示唆に富んでいます」との指摘を受けたのだ。
そこでまずは、この美味しんぼ13巻の内容について紹介したい。当然全てを紹介しきれるわけではないので、興味のある人はぜひコミックを読んでほしい。
美味しんぼ・山岡士郎が
「人間は罪深い生き物」と語ったワケ
「鯨を食べるのは野蛮人の証拠です!!」
「山岡さんっ! あなたが鯨を食べるなんて!?あなたという人間を見そこないましたよっ!」
と、冒頭にこんなシーンがある、美味しんぼ13巻「激闘鯨合戦」は、主人公・山岡士郎と、山岡の友人で捕鯨に反対するジェフとの鯨食についての問答が中心になって展開されている。捕鯨に強硬に反対するジェフを料亭へと連れていき、クジラだということを伏せて鯨肉を食べさせる山岡。何の肉だか分からないまま「これは旨いっ!」と言ってしまったジェフの怒りは頂点へと達する。
しかし山岡は、「牛や鶏は食べるのに、なぜ鯨はダメなのか」とジェフを問い詰める。言葉が出ないジェフに、山岡は次のようなダメ押しをする。
「そうだよ、俺はとても罪深い人間だ……」
「人間という人間は全て罪深い存在なんだ」
「どんな生き物でも、どんなに小さな道端の雑草でも、自分が生きるためには一生懸命だ。生きたいと強く願う気持ちに、植物も動物も変わりはない。その命あるものを食べなければ、人間は1日とて生きていけない罪深い存在なんだよ。菜食主義者だって決して無罪ではない」
「牛を殺してもいいが、鯨を殺してはいけないなんてことがあるもんか!両方有罪だ!」
「生命ある物を殺さなければ生きていけない人間が、生まれつき背負った罪なんだよ!」
「そう……人間は業というか生まれつきの罪というか、そういうものを背負ったとても悲しい生き物なんだ」
その人に黙って信条に反する物を食べさせたという山岡の行為については今も根強い批判があり、理由は定かではないが、アニメでは欠番になっていたりすることもあるなど、物議を醸す内容ではある。ただ、山岡が展開した持論だけを切り取って考えてみるとどうだろうか。筆者はこの山岡の考えにおおむね賛成できる。