さらに野澤弁護士は、歴史的・地域的な側面を踏まえ、次のように語る。
「日本では、魚に加えて馬などの生肉、いわゆる『刺し身』を堪能する食文化が昔からあり、まだ活発に動いている魚などを利用した『活き造り』や、カニ・エビなどの甲殻類を生きたまま熱湯に直接入れる料理方法もいまだ健在です」
「一方で(食中毒の関係などもあり)生魚をほとんど食べない地域は世界的に多く、キリスト教の国を中心にレストランでの料理方法等には種々の規制があります。『イスラム教では豚食が、ヒンズー教では牛食がタブー』はよく知られた一般知識ですが、そうしたもの以外は、大半の日本人にとって『よく分からない規制』といった感覚であろうと思われます」
「美味しんぼ13巻にある『他国の食文化を、自分たちの食文化と異なるからといって野蛮と決めつけるのは、それこそ野蛮な行為なんじゃないか?』との山岡士郎さんの発言は、バブル崩壊後の不景気が30年以上続き、寛大さを失いつつある現代日本で今一度見直されるべきフレーズであるといえるでしょう」
2016年の話であるが、同じく秋田県の鹿角市で、4人がツキノワグマに襲われ亡くなった事件が起きた。その付近で駆除されたクマの胃袋からは人体の一部と毛髪が見つかっている。
クマは雑食だが、動物園ではリンゴやニンジンなどの野菜や果物を中心に与えられており、野生のクマでも肉はほとんど食べず、まれに死んだ鹿の肉などを食べる程度だ。しかし、一度、人間を食べて「おいしい」「人間は襲うのが楽だ」とクマが理解してしまうと、話が違ってくる。見た目のかわいらしさとはまったく違った面を私たちは理解しなくてはならない。