会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変#14Photo:PIXTA

上場企業の監査を支えているのが、四大を辞めた会計士による「アルバイト監査」であることは、意外と知られていない。なぜバイトが支える構造になっているのか。特集『会計士・税理士・社労士 経済3士業の豹変』(全19回)の#14では、その背景を探るとともに、最新の日給相場を調べた。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

資本市場の健全性を支える
アルバイト監査の実態

「今年は、何日売ってくれますか――」

 四大監査法人を辞めた“ヤメ四大”会計士には毎年、定期的に交渉事が発生する。交渉相手は主に、上場企業の監査を担う中小監査法人だ。

 中小監査法人は恒常的に会計士が不足している。それに加えて、金融庁や公認会計士・監査審査会によって監査が厳格化され、監査品質の向上も急務だ。そこで、上場企業の監査経験を持つ、独立している会計士をかき集めて、非常勤の会計士として契約し、頭数をそろえるのだ。

 集める会計士は必然的に、品質管理が徹底された環境での監査経験がある、ヤメ四大となる。

 監査法人は、引き受けている上場企業の決算と監査が終わると、監査の年間計画を立てるのが通例だ。そこで、年間でどのような監査工程があり何人の会計士が必要かを洗い出し、足らなければヤメ四大を相手に、冒頭のように交渉する。かつては紹介をベースに人を集めていたが、今では転職エージェントやヘッドハンターなどを使って募集することもあるという。

 交渉の際の「何日」とは、年間何日程度を上場企業の監査に費やせるかということ。監査はその企業に出向いたり、資料を精査したりと、一日拘束されることがほとんどなため、日単位で交渉が行われることが多いという。その日数分を、中小監査法人は日給を払って買い取るわけだ。

 監査業界では「監査のバイト」と呼ばれ、昔から行われてきた。だが、監査を依頼する上場企業には、あまり知られていない。監査に訪れる監査チームは、皆その監査法人のロゴが入った名刺を持っているからだ。監査チームの内情は、実は出自もばらばらで、お互いに顔を合わせて数日しかたっていないということも珍しくない。

 上場企業の監査と日本の資本市場の健全性は、ヤメ四大を中心とした無数の監査のバイトに支えられている現実がある。

 なぜ、そうしたバイトが支える構図になっているのか。また、バイト代はどの程度なのか。探っていくと、知られざる“うまみ”があることが分かってきた。