“溶接レス”で高速ねじ取り付けを実現 ユニークな情報発信にも注力し話題を呼ぶ独自の金型を使い、板材の穴にかしめ雄ねじをセット。タレットパンチプレス機にセットすれば、溶接いらずで複数のねじの取り付け作業が高速で完了

 同工法で国内特許、および中国、米国でも特許を取得。技術をオープンにしながら話題性のあるPRを推進し、技術の使用許諾や技術指導、治具・チップの供給などをパッケージ化し販売する新ビジネスもスタートする。「社会貢献的な意義も含め、技術の普及を図り、同業者の方々にお役立ていただきたい」と語る。

 画期的な工法を世に広げるツールとして、ホームページで公開されている動画も必見だ。「溶接加工vsクリンチングスピードファスナー工法」と題し、社長の津田氏と若手社員のバトル形式で展開される。熟練の溶接技術をもってしても敗北を喫し悔しがる津田氏のリアルな熱演とともに、打ち出されるメッセージ「技術は技量を凌駕する」には納得感がある。

 社長に就任後も業務の大半を現場作業に費やし、現場の困りごとに対して改善策を編み出し続ける津田氏。リベッターやナッターなどのハンドツールを足踏み式で作動できる「フットペダルスタンド」や、板金端材でいっぱいになった回収ボックスをフォークリフトのみで簡単に排出できる「フォークるン」など、特許取得済みの独自技術・商品は数多い。

ユニークな仕掛けで
ものづくりの魅力を発信

“溶接レス”で高速ねじ取り付けを実現 ユニークな情報発信にも注力し話題を呼ぶハンディーツールを置くだけで足踏み式に転換できる両手作業用の「フットペダルスタンド」
●株式会社津田工業 事業内容/エレベーター制御盤、配電盤、LED街路灯板金部品、自作工作機械製造、従業員数/5人、売上高/1憶8000万円(2022年度)、所在地/岐阜県各務原市金属団地80-4、電話/058‐371‐1422、URL/tsuda-kogyo.co.jp

 模倣されるリスクを踏まえても自社技術・商品を世に発信する狙いとして、人手不足が進む板金業界にあって、「より多くの人にものづくりの面白さを広めたい」という津田氏の強い思いがある。

 そのために「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」など公的制度を活用するべく、県の産業経済振興センターが実施する「事業可能性評価」にも積極的にエントリーしA評価を取得。「事業計画書の作成を通じて、今の板金業界にとって何が必要なのか、考えるいい契機にもなっています」と言う。

 常に面白いしかけを考え、地域イベントでの「板金加工体験コーナー」出展や、板金加工によるノベルティー製作など、話題性のある取り組みを続々と繰り出す同社。次なる挑戦にも期待したい。

(「しんきん経営情報」2023年11月号掲載、協力/岐阜信用金庫