顧客への技術提案として「溶接レス板金」に注力。明確な検査方法がなく、不具合が起きやすい溶接に頼らない「かしめ」(溶接ではなく、金属の塑性変形を利用した結合加工方法)加工技術を編み出し、板金業界で注目を集めている企業がある。岐阜県各務原市の津田工業だ。(取材・文/大沢玲子)
同社は1963年、津田板金工業所として創業。エレベーターの制御盤関連の加工を中心に成長を遂げてきた。先代から引き継ぎ、2015年、代表取締役に就任した津田義久氏は、最新の板金加工設備・加工技術を積極的に取り入れ、新規開拓にもまい進する。「特に『目で見える品質管理』を徹底する中で、品質面で課題を感じていた溶接工法に代わり、リベットやセルフクリンチングスタッドなどを使った圧入技術の提案を推進してまいりました」と津田氏。
さらに溶接いらずで高性能な工法を目指し、19年に確立したのが冒頭のかしめの新たな結合技術である、タレットパンチプレス機(タレパン)で複数かつ異径のねじを一気に取り付けられる「クリンチングスピードファスナー工法」だ。
溶接工法の4~6倍の
処理能力を実現
最大の特徴は簡単操作で高い処理能力と精度を実現できること。タレパンに専用の金型とダイチップ付きの金具を組み合わせて加工する方法で、作業者は板材の穴に圧入ねじ(クリンチングファスナー)を置き、タレパンにセットするだけでOK。従来の溶接工法の4~6倍、専用の単発プレス機の2~3倍の処理能力を擁し、「当社ではエレベーター操作ボックスの組み立てに活用し、1製品に4種類、30本近いねじを30秒前後で処理しています」(津田氏)。板金加工業にとって必須アイテムのタレパンを活用するため、専用機を複数導入するよりイニシャルコストの優位性も高い。