半導体の地政学 米中分断の勝ち組・負け組#4Photo:Yau Ming Low/gettyimages

米国の対中制裁という政治介入が、半導体の需要と供給に激変をもたらした。投資家は米中陣営の誰が利益を得て、誰が苦しむのかを再考する必要がある。特集『半導体の地政学 米中分断の勝ち組・負け組』の最終回では、半導体戦争を投資に生かす三つのポイントを深掘りする。(台湾「財訊」 郭庭昱、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「週刊ダイヤモンド」2023年10月21日号の第2特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

米中両陣営の長所と短所は?
半導体戦争を巡る投資3大ポイント

 米国は国家安全保障と技術的優位性を目的に、日本やオランダ、台湾と連携して中国の半導体開発を抑制し、自由競争と商業的利益に基づいた需要と供給の関係を変化させて、長期的な変動を引き起こした。政治介入により半導体サプライチェーン企業の株価は乱れ、恩恵を受ける層と苦しむ層が現れた。

 世界的な半導体戦争を巡る投資ポイントは三つある。(1)米中両陣営の長所と短所は何か。弱点を補う可能性が高い陣営はどちらなのか。(2)半導体需要は増えるのか。米中陣営に属する企業の誰が得をし、誰が損をするのか。(3)2025年以降、先端プロセスの生産能力はどのような影響を及ぼすのか。

 米陣営は中国への半導体露光装置の輸出を制限。中国はガリウムとゲルマニウムの輸出規制で対抗し、将来的にはレアアースの輸出も規制すると脅している。

 しかし、冷静に歴史を振り返ると、原材料不足は価格上昇で解決できることが多い。22年に始まったロシア・ウクライナ戦争でネオンガスが不足し、台湾TSMCへの供給が途絶えるのではないかとメディアで騒がれた。しかし1年後、TSMCの魏哲家CEO(最高経営責任者)は「7倍の価格で手に入れた」と語り、原価率が非常に低いため、粗利益率には影響がないことを明らかにした。

 一方、先端半導体の製造工程は複雑だ。米中半導体戦争で、米国は自国のEDA(設計ソフト)規制のほか、オランダや日本と協力して露光装置などを制限。TSMCの製造技術も中国を阻んでおり、短期的な突破は困難となる技術的な足かせが何層にも重なっている。

 次ページでは、半導体戦争を投資に生かす三つのポイントを展望する。