急転直下、サムスンとの仰天提携
シャープの「賭け」に勝算はあるのか
3月初旬、経営状況の悪化を背景にビジネスパートナーを求めてきたシャープは、これまで最大のライバルであった韓国のサムスン電子と提携すると発表した。
具体的には、シャープが第三者割当で約104億円の株式を発行し、それをサムスンの日本法人であるサムスン電子ジャパンが引き受けることになる。今回の提携によりサムスンは、金融機関を除くとシャープの最大の株主になる。
今回の提携について、専門家の間では以前から相応の観測は出ていたものの、実現したことに関しては驚きを持って受け止められている。昨年3月、シャープと台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との提携が一旦は成立し、約670億円の出資が実施されることで合意した。それに伴い、シャープの堺工場、境ディスプレイプロダクトには、すでに鴻海サイドから37.6%の出資がなされている。
ところが、その後のシャープ株の下落によって、鴻海との合意が暗礁に乗り上げてしまった。財務内容の悪化を食い止めたいシャープは、取引銀行から3000億円を超える借り入れを行う一方、携帯電話用のチップなどに強みを持つクアルコムとの業務提携を結び、同社から最大100億円の出資を受けることに合意している。
そうした状態にもかかわらず、シャープがサムスンとの提携を急いだ背景には、同社の財務内容が厳しく、しかも亀山など液晶工場の操業率を引き上げないと、多額の減損を余儀なくされることがあった。
ただ、サムスンと提携したことで、鴻海とシャープとの包括的な提携はほぼなくなったと見るべきだ。また、IT関連分野のもう1人の巨人で、鴻海との関係が深いアップルとの関係にも、長い目で見ると支障が出ることが懸念される。
その意味では、今回のサムスンとの提携は「一種の賭け」といえるかもしれない。そこまでシャープは追い込まれているのだろう。