ちなみに、この都市は1905年の第一次ロシア革命が始まった場所であり、ロシア革命が成功してソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)が成立すると、首都は再びモスクワに移転します。その後、この都市は革命の指導者レーニンの名前をとってレニングラード(レーニンの町)と改名されます。プーチンは、ここで生まれています。ピョートル大帝に縁があるのです。
2022年9月、ロシアがウクライナの4州の自国への併合を承認した際、プーチン大統領はクレムリン(大統領官邸のある場所の通称)で演説しました。そのときの演説の一部を見てみましょう。プーチン大統領は、この4州の地域に関し、ロシアの歴史を語っています。
「我々の祖先、すなわち古代ロシアの起源から何世紀にもわたってロシアを建設し守ってきた人々の世代が勝利を収めてきたのである。ここノヴォロシアでは、ルミャンツェフ、スヴォーロフ、ウシャコフが戦い、エカテリーナ二世とポチョムキンが新しい都市を築いた。私たちの祖父や曾祖父は、大祖国戦争中、ここで死闘を繰り広げたのです」
あまり知られていない名前が列挙されていますが、ロシア帝国の英雄たちです。エカテリーナ二世は知られている名前ですね。彼女はロシアを強大な帝国にした女帝で、彼女が確保した領域は「ノヴォロシア」(新しいロシア)と呼ばれています。
ノヴォロシアとは、今回ロシアが併合した地域を含み、さらに北部に広がる地域です。敢えてノヴォロシアという名称を出したということは、先祖が確保した土地は、我々のものだというむき出しの領土欲です。
この演説に登場したエカテリーナ二世は、ピョートル大帝に続いてロシア帝国の領土の拡張を進めた人物です。ロシア帝国の悲願である不凍港を求めて南下政策を進め、二度にわたってオスマン帝国と戦い、クリミア半島を併合しています。
プーチン大統領がクリミア半島に執着するのは、ここが敬愛するエカテリーナ二世が獲得した土地だからなのです。
いかなる侵略者もはねのけ続けた
偉大なソ連の誇りを取り戻したい
そのロシアで1917年、世界で最初の社会主義革命が起き、「ソビエト社会主義共和国連邦(通称ソ連)」が誕生します。
ソビエトとは、ロシア語で「評議会」という意味です。革命を指導したレーニンは、議会ではなく、労働者や農民、兵士による自主的な革命組織である評議会を軸に武力革命を達成。皇帝一族を殺害します。この評議会による国家というのがソビエトの国名の由来です。