累計発行部数が8700万部を超えた大人気漫画『キングダム』。早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏によると、同作品の登場人物の中には、働く人の参考になる「無敵のビジネスリーダー」といえる武将がいるという。それはいったい誰なのか――。ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『入山章栄の世界標準の経営理論』(全30回)では、入山氏が視聴者に薦めたい「名著(漫画含む)」を厳選。経営学と絡めながら解説している。今回は、その骨子を書き起こした記事を特別公開する(元の動画はこちら)。
ビジネス界でも無敵!?
頭の固い人が「参考にすべき武将」とは
『キングダム』(原泰久/集英社)とは、中国の春秋戦国時代を舞台に、奴隷の身分から大将軍を目指す「信(しん)」と、中華統一を目指す「政(せい)」の2人を主人公にした歴史バトル漫画だ。
実は同作品は、エンタメとして面白いだけでなく「ビジネスのヒントにもなる」ため、日本の起業家などから注目を集めている。そして、自身もキングダムファンだという早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は、仕事の参考になる武将として、多種多様なキャラクターの中から特定の人物名を挙げている。
その人物とは、信や政と同じ秦国の「桓騎(かんき)」将軍だ。ファンなら「当然」だと思うかもしれないが、実はこの桓騎、2020年5月28日に発売された『週刊ヤングジャンプ』の「第一回キングダム総選挙」で6位にランクインした超人気キャラクターなのだ。
彼はなぜ支持されているのか。その要因は「異色の出自」だろう。古代中華では有力な士族(貴族)から将軍になるのが一般的だったが、桓騎はもともと盗賊の出身で、大将軍へと上り詰めた実力者である。だからこそ、ほかの武将ではできないような「盗賊的なやり方」で戦果を挙げることができる。それが読者にとって魅力的に映るのだ。
例えば、漫画だけでなく史実にも登場する「函谷関(かんこくかん)の戦い」でのこと。紀元前241年、楚・趙・魏・斉・燕・韓の合従軍(がっしょうぐん)が突如として秦に侵攻し、秦は重要な関所・函谷関で迎え撃った。
厳しい防衛戦を強いられる中、桓騎将軍は「敵兵と同じ格好をして、敵武将の本陣まで堂々と突っ込んでいく」という奇策を打った。「ネタバレ」にならないよう詳細は割愛するが、これが戦況を変える効果を生んだ。
上記の大胆不敵な戦略は、普通の武将では考えられないはずだ。しかし桓騎は、常識にとらわれないことを平気で実行できる力を持っていた。そうした規格外の発想力や行動力が、われわれビジネスパーソンの参考になると入山氏は語る。
ただし、古代中華の戦争においてもビジネスにおいても、この常識というものは非常に厄介だ。その枠にとらわれてしまうと、自由な発想・行動が妨げられるからだ。