「他社がやっているから…」
桓騎とは違って「同調」する日本企業

 やや専門的な話になるが、入山氏は2019年12月に上梓した書籍『世界標準の経営理論』の中で、ビジネス界の企業・組織などの方針が自然と似通ってくる現象を「制度理論(institutional theory)」を用いて説明している。

 制度理論によると、社会における人・組織・企業は「心理的制約」などから、経済合理性だけでは十分に説明がつかない行動を取るという。

 その具体例として、同書では「ダイバーシティ経営」が注目され始めた2016年頃のエピソードを紹介している。多くの企業が「他社がやっているから」「社会的風潮だから」などと、合理的な裏付けがない「なんとなくの理由」で同様の経営方針を採用したそうだ。

 いわば、「常識から外れない」ことを重視し、周囲に同調したのだ。「人間はどうしても常識で物事を考えがちで、だんだん考え方が同質化していきます」と入山氏は語る。

 というのも、人間の脳のキャパシティーには限界があり、業務上のさまざまな判断に対して「本当にこれでいいのか」と毎回じっくり検証している余裕はない。

 だからこそ、一般的に広く行われている判断を「常識」と捉え、あえて疑わないことで脳の負担を軽くしているのだ。

 だが、常識とは人間が作り出した幻想にすぎない。人々がそう思い込んでいるだけであり、本来は新たな発想によって「壊す」ことも可能である。変装をして敵の大軍団に突っ込んでいく桓騎の姿からは、そのことを学べるというわけだ。