外国人介護人材の扱いはどう違う?
日本とは違う、台湾社会の“優しさ”
日本にも現在、約5万人の外国人介護従事者がいる。彼らの賃金は21万~24万円程度と、日本人介護職員と同等である。一方、台湾の住み込み外国人介護者の給料は平均で2万台湾ドル(約9万2000円)、施設勤務では2万7000台湾ドルとされている。一見、日本の給料は2倍程度に見えるが、台湾では雇用者が宿舎や食事代を負担することが多いため、実際の可処分収入は台湾の方が多いと考えられる。
京都大学の安里和晃准教授はこう話す。「台湾における介護福祉の特徴は、家族介護を強化する外国人家事労働の市場化に始まり、近年になって政府の役割が強調されるようになった点だろう。日本を参考に介護保険制度の導入も決まったが、2016年、民進党政権に移行したため、それはかなわなかった。現在は訪問・通所・レスパイト・配食など、コミュニティケアを通じたプログラムを中心に公的サービスが提供されている」
外国人労働者に対する国民意識には、日本と台湾の間に大きな違いがある。日本ではいまだに一部の人々が外国人を「外人」と呼び、上から目線の態度を取ることがあるが、台湾では「外国人労働者は社会の一部で、なくてはならない存在」との認識が広まっている。そもそも、家事代行やベビーシッターなど短時間でも他人を家に入れて働いてもらう形が広まっていない日本では、台湾のように住み込みで外国人労働者が家庭に入るというのは、相当ハードルが高いはずだ。
筆者は今回4年ぶりに台湾を訪れたが、行く先々で人々の優しさに触れた。行ったことがある方は分かると思うが、台湾の人は非常に優しく、いい意味で“ゆるい”。日本にはないこのゆるさ、優しさも、台湾が外国人労働者を獲得する上で良い影響を与えていると思う。
One-Fortyの陳さんはこう語っていた。「近い将来、政府と力を合わせて、台湾はもっと寛容になっていく。もっと多くの外国人が来たいと思う多民族社会を築き、全世界の見本になるというのが夢だ。その夢を実現したい」
台湾は外国人との共生型社会へと確実に進んでいる。台湾の人々は「日本はライバル」と言うけれど、外国人労働者を集め、社会で共生するという競争では、日本が台湾に勝つのは相当難しそうだ。